書評

『トッカン―特別国税徴収官―』(早川書房)

  • 2017/10/01
トッカン―特別国税徴収官― / 高殿 円
トッカン―特別国税徴収官―
  • 著者:高殿 円
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(350ページ)
  • 発売日:2010-06-24
  • ISBN-10:4152091371
  • ISBN-13:978-4152091376
内容紹介:
税金滞納者から問答無用で取り立てを行なう、みんなの嫌われ者-徴収官。そのなかでも、特に悪質な事案を担当するのが特別国税徴収官(略してトッカン)だ。東京国税局京橋地区税務署に所属する、… もっと読む
税金滞納者から問答無用で取り立てを行なう、みんなの嫌われ者-徴収官。そのなかでも、特に悪質な事案を担当するのが特別国税徴収官(略してトッカン)だ。東京国税局京橋地区税務署に所属する、言いたいことを言えず、すぐに「ぐ」と詰まってしまう鈴宮深樹(通称ぐー子)は、冷血無比なトッカン・鏡雅愛の補佐として、今日も滞納者の取り立てに奔走中。納税を拒む資産家マダムの外車やシャネルのセーター、果ては高級ペットまでS(差し押さえ)したり、貧しい工場に取り立てに行ってすげなく追い返されたり、カフェの二重帳簿を暴くために潜入捜査をしたり、銀座の高級クラブのママと闘ったり。税金を払いたくても払えない者、払えるのに払わない者…鬼上司・鏡の下、ぐー子は、人間の生活と欲望に直結した、"税金"について学んでいく。仕事人たちに明日への希望を灯す、今一番熱い職業エンターテインメント。

税の徴収、あの手この手で奮闘

本書の主人公は、映画「マルサの女」に描かれた国税庁査察部の査察官ではない。東京の京橋税務署の〈トッカン〉こと特別国税徴収官・鏡雅愛(まさちか)の補佐を務める新米の女性徴収官・鈴宮深樹(みき)が語り手を務める。

勝手な理屈をつけては、税金を延々と滞納する人びとから、二人が何がなんでも税を徴収しようと、あの手この手で奮闘するさまが、臨場感豊かに描き出される。交渉相手は、コーヒーチェーン店の店主、自転車屋の親爺(おやじ)、町工場の経営者、高級クラブのママなど。おとなしく納税する者はおらず、つねに徴収官と論争になり、激しく対立する。徴収官は、たとえ嫌われようと罵倒(ばとう)されようと、職務だけは果たさなければならない。

冷徹無比な鏡と、そんな鏡を嫌いながらも、どこかであこがれる深樹の心理の葛藤(かっとう)が、物悲しくもおかしい。専門用語が飛び交い、税法の講釈もあるが、邪魔にはならず、税務署のPR本?としても使えそうだ。

ライトノベル、漫画原作の書き手らしく、ときどき用語の使い方に今風の乱れがあるが、ストーリーテリングのうまさは、職人わざといってよい。
トッカン―特別国税徴収官― / 高殿 円
トッカン―特別国税徴収官―
  • 著者:高殿 円
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(350ページ)
  • 発売日:2010-06-24
  • ISBN-10:4152091371
  • ISBN-13:978-4152091376
内容紹介:
税金滞納者から問答無用で取り立てを行なう、みんなの嫌われ者-徴収官。そのなかでも、特に悪質な事案を担当するのが特別国税徴収官(略してトッカン)だ。東京国税局京橋地区税務署に所属する、… もっと読む
税金滞納者から問答無用で取り立てを行なう、みんなの嫌われ者-徴収官。そのなかでも、特に悪質な事案を担当するのが特別国税徴収官(略してトッカン)だ。東京国税局京橋地区税務署に所属する、言いたいことを言えず、すぐに「ぐ」と詰まってしまう鈴宮深樹(通称ぐー子)は、冷血無比なトッカン・鏡雅愛の補佐として、今日も滞納者の取り立てに奔走中。納税を拒む資産家マダムの外車やシャネルのセーター、果ては高級ペットまでS(差し押さえ)したり、貧しい工場に取り立てに行ってすげなく追い返されたり、カフェの二重帳簿を暴くために潜入捜査をしたり、銀座の高級クラブのママと闘ったり。税金を払いたくても払えない者、払えるのに払わない者…鬼上司・鏡の下、ぐー子は、人間の生活と欲望に直結した、"税金"について学んでいく。仕事人たちに明日への希望を灯す、今一番熱い職業エンターテインメント。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2010年8月22日

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