解説
『必笑小咄のテクニック』(集英社)
通訳時代もエッセイストのころも、そして小説家になってからも、米原万里の強力な武器の一つが小咄(こばなし)だった。彼女のいう小咄とは、〈笑い話、ジョーク、アネクドート、ショートショート……名前はいろいろだが、本質は同じ。短くて笑わせてくれる話〉(八ページ)のこと。通訳現場の緊張を、無関心な読者の心の鎧(よろい)を、爆笑ものの小咄で一瞬のうちに溶かして、いきなり相手のふところに飛び込んで行く。それが彼女のやり方だった。
言いかえれば、笑いこそが彼女の最大の武器だった。つねに笑い笑わせる感覚の手入れを怠ることのなかった彼女の、これは虎の巻のような一冊である。
言いかえれば、笑いこそが彼女の最大の武器だった。つねに笑い笑わせる感覚の手入れを怠ることのなかった彼女の、これは虎の巻のような一冊である。
初出メディア

米原万里展「ロシア語通訳から作家へ」図録 2008年10月刊
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