解説
『パンツの面目ふんどしの沽券』(筑摩書房)
山陰地方の山林地主の家に生まれた米原昶(いたる)は、自分の信じた思想を誠実に実践してその生涯をまっとうした。生家をすて、学問をあきらめ、戦前戦中の十六年間、地下活動をつづけた。娘の万里には、こういう父の生き方が日本男子の手本のように思われた。そしてその父が愛用する越中フンドシを尊敬した。
エッセイストとして高い評価を得たころ、彼女は得意のエッセイの形式で、越中フンドシを通して日本固有の価値を見直そうとした。ところがこの越中フンドシなるものがタダモノではなかった。もちろん彼女の研究心もタダモノではなかったから、ここに「人間の下半身を覆う布切れ」から見た世界文化生活史の決定版が誕生した。
エッセイストとして高い評価を得たころ、彼女は得意のエッセイの形式で、越中フンドシを通して日本固有の価値を見直そうとした。ところがこの越中フンドシなるものがタダモノではなかった。もちろん彼女の研究心もタダモノではなかったから、ここに「人間の下半身を覆う布切れ」から見た世界文化生活史の決定版が誕生した。
初出メディア

米原万里展「ロシア語通訳から作家へ」図録 2008年10月刊
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