解説
『他諺の空似 - ことわざ人類学』(中央公論新社)
小説家としては別の物差しが必要になるが、エッセイストとしての米原万里は、彼女の読者ならよくご存知のように、七つの武器を駆使した。それらを列挙すれば、①切れ味のいい小咄②爆笑哄笑ものの下ネタ③鋭く深い政治批判④ヨーロッパ史とロシア史についての底知れぬ蘊蓄(うんちく)⑤プラハでの少女時代の体験⑥同時通訳時代の経験、そして七つ目が、おびただしい数の諺のつるべ打ちである。
短かった生涯の最後のころ、彼女は七つ目の武器である万国の諺を、あれこれ比べる作業に着手、すぐれない体調をおして一巻にまとめた。彼女が①から⑥までの武器を使いこなしたのはもちろんだが、いま通読すると、じつはこの本が比較人類学分野での一種の達成になっていたことを知って驚く。
【この解説が収録されている書籍】
短かった生涯の最後のころ、彼女は七つ目の武器である万国の諺を、あれこれ比べる作業に着手、すぐれない体調をおして一巻にまとめた。彼女が①から⑥までの武器を使いこなしたのはもちろんだが、いま通読すると、じつはこの本が比較人類学分野での一種の達成になっていたことを知って驚く。
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初出メディア

米原万里展「ロシア語通訳から作家へ」図録
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