書評

『光の子ども 1』(リトル・モア)

  • 2021/11/07
光の子ども 1 / 小林 エリカ
光の子ども 1
  • 著者:小林 エリカ
  • 出版社:リトル・モア
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(188ページ)
  • 発売日:2013-12-05
  • ISBN-10:4898153755
  • ISBN-13:978-4898153758
内容紹介:
小林エリカ渾身の新作コミック、テーマは“放射能"―― それはいつ、どこから、どうやって、ここに来たのか?いまから115年前、科学者マリ・キュリーによって名づけられた“放射能"。… もっと読む
小林エリカ渾身の新作コミック、テーマは“放射能"
―― それはいつ、どこから、どうやって、ここに来たのか?

いまから115年前、科学者マリ・キュリーによって名づけられた“放射能"。
マリが「わが子」と呼んだ、幻想的な青白い光を放つ新元素ラジウムは、本当に人類の希望だったのか?
マンハッタン・プロジェクト、広島・長崎、スリーマイル、チェルノブイリ、そして…。

2011年の日本に生まれた主人公“光"と、猫の“エルヴィン"を通じて、“放射能"の歴史がひもとかれていく。

史実とフィクションを交えた物語。センシティブかつ強烈な意欲作。
〈巻末には放射能をとりまく歴史が一目でわかる年表と地図、ブックリストも収録〉
光の子ども 2 / 小林 エリカ
光の子ども 2
  • 著者:小林 エリカ
  • 出版社:リトル・モア
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(208ページ)
  • 発売日:2016-02-05
  • ISBN-10:4898154328
  • ISBN-13:978-4898154328
内容紹介:
個々の人々の想いと、歴史のうねり。小林エリカさんは近い将来、この国の最も重要な表現者の一人になるだろう。――中村文則(帯コメントより)小説「マダム・キュリーと朝食を」で芥川賞・三… もっと読む
個々の人々の想いと、歴史のうねり。
小林エリカさんは近い将来、この国の最も重要な表現者の一人になるだろう。
――中村文則(帯コメントより)


小説「マダム・キュリーと朝食を」で芥川賞・三島賞候補となった小林エリカがひもとく〈放射能〉の歴史。

マンガ表現の最先端がここにある。

・ マリ・キュリーが発見した新元素ラジウムは、長寿の妙薬として世界的ブームに。
・ アインシュタイン〈一般相対性理論〉発表。
・ ヒトラー率いるナチスの台頭。
・〝原爆の母〟リーゼ・マイトナーとオットー・ハーン共同研究による〈核分裂〉の発見。
・ アメリカで「マンハッタンプロジェクト」始動
・ 広島と長崎に原子爆弾投下

―― “希望の光”はいかにして兵器となり、歴史的悲劇をもたらしたのか。


巻末には放射能をとりまく歴史が一目でわかる年表と地図、ブックリストも収録。
1898年、マリ・キュリーによって名付けられた〈放射能〉と、今日直面するエネルギー問題のつながりを、2011年生まれの光少年と猫のエルヴィンが案内します。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。


放射能発見の歓喜と現代の恐怖

科学の研究にはのちにとんでもない結果を招くものが少なくないが、その最たるものは放射能だろう。不幸を生み出す規模がちがう。あんな研究をしてくれなければこんなことにならなかったのに、と現代の私たちは思う。だが、マリ・キュリーと夫がラジウムの抽出に成功したとき、世界はどれほど熱狂したことか。

X線やラジウムの発見、相対性理論や原子核の存在の証明、核分裂の発見など、十九世紀末から二十世紀前半にかけては、原子力の時代に突入するための科学的知見が次々と公表された時期だった。その流れに、二〇一一年生まれの被曝した町から来た少年・光が、時間を超えてキュリーの娘と出会うという物語が織り込まれる。片目の猫エルヴィンを案内人として。

難解な科学の歴史が主題なのに、するっと頭に入ってくるのは、マンガで書かれているためだけではない。当時の人々を包んだ歓喜と、現代の私たちが直面する恐怖という、相反する感情にどう折り合いをつけるのかという切迫した思いが伝わってくるからだ。

一巻ではマリ・キュリーの、二巻では核分裂を発見し「原爆の母」と呼ばれたリーゼ・マイトナーの人生が主に綴られるが、個人の才能と情熱が玉突きのように、いや核融合のように社会の動きと連鎖して歴史のうねりが生まれるさまに息を呑む。これが私たちのたどってきた道程なのだと。

扱われている時間の幅が長く、文字だけでこの内容をこの紙幅で表現するのは不可能に近いだろう。絵・写真・図などのビジュアル要素を言葉と組み合わせ、コマ割りで象徴的に表して時間を圧縮するというマンガ表現に特有の効果がうまく活かされている。

専門化が進んで視野狭窄におちいりがちな今の時代、ジャンルにとらわれていると物事の本質を見失う。マンガを使ってその境界を軽々と飛び越えるさまが新鮮だ。

光の子ども 2 / 小林 エリカ
光の子ども 2
  • 著者:小林 エリカ
  • 出版社:リトル・モア
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(208ページ)
  • 発売日:2016-02-05
  • ISBN-10:4898154328
  • ISBN-13:978-4898154328
内容紹介:
個々の人々の想いと、歴史のうねり。小林エリカさんは近い将来、この国の最も重要な表現者の一人になるだろう。――中村文則(帯コメントより)小説「マダム・キュリーと朝食を」で芥川賞・三… もっと読む
個々の人々の想いと、歴史のうねり。
小林エリカさんは近い将来、この国の最も重要な表現者の一人になるだろう。
――中村文則(帯コメントより)


小説「マダム・キュリーと朝食を」で芥川賞・三島賞候補となった小林エリカがひもとく〈放射能〉の歴史。

マンガ表現の最先端がここにある。

・ マリ・キュリーが発見した新元素ラジウムは、長寿の妙薬として世界的ブームに。
・ アインシュタイン〈一般相対性理論〉発表。
・ ヒトラー率いるナチスの台頭。
・〝原爆の母〟リーゼ・マイトナーとオットー・ハーン共同研究による〈核分裂〉の発見。
・ アメリカで「マンハッタンプロジェクト」始動
・ 広島と長崎に原子爆弾投下

―― “希望の光”はいかにして兵器となり、歴史的悲劇をもたらしたのか。


巻末には放射能をとりまく歴史が一目でわかる年表と地図、ブックリストも収録。
1898年、マリ・キュリーによって名付けられた〈放射能〉と、今日直面するエネルギー問題のつながりを、2011年生まれの光少年と猫のエルヴィンが案内します。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

光の子ども 1 / 小林 エリカ
光の子ども 1
  • 著者:小林 エリカ
  • 出版社:リトル・モア
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(188ページ)
  • 発売日:2013-12-05
  • ISBN-10:4898153755
  • ISBN-13:978-4898153758
内容紹介:
小林エリカ渾身の新作コミック、テーマは“放射能"―― それはいつ、どこから、どうやって、ここに来たのか?いまから115年前、科学者マリ・キュリーによって名づけられた“放射能"。… もっと読む
小林エリカ渾身の新作コミック、テーマは“放射能"
―― それはいつ、どこから、どうやって、ここに来たのか?

いまから115年前、科学者マリ・キュリーによって名づけられた“放射能"。
マリが「わが子」と呼んだ、幻想的な青白い光を放つ新元素ラジウムは、本当に人類の希望だったのか?
マンハッタン・プロジェクト、広島・長崎、スリーマイル、チェルノブイリ、そして…。

2011年の日本に生まれた主人公“光"と、猫の“エルヴィン"を通じて、“放射能"の歴史がひもとかれていく。

史実とフィクションを交えた物語。センシティブかつ強烈な意欲作。
〈巻末には放射能をとりまく歴史が一目でわかる年表と地図、ブックリストも収録〉

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2016年04月24日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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