書評

『前立腺歌日記』(講談社)

  • 2022/02/02
前立腺歌日記 / 四元 康祐
前立腺歌日記
  • 著者:四元 康祐
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(290ページ)
  • 発売日:2018-11-29
  • ISBN-10:406513806X
  • ISBN-13:978-4065138069
内容紹介:
長年ドイツで暮らす「私」は、ある日、前立腺がんと診断された。手術、リハビリセンターでの3週間、その後の放射線治療、そして得たものは、臍の下の空洞と…。がんの話がこんなに面白くてよいのだろうか…。ドイツ在住の詩人が瓢々と綴った闘病私/詩小説。

ユーモアたたえた闘病記

ドイツに長年住み続けている詩人・四元康祐さんが、タイトル通り、前立腺のガンに罹り、治療を受け、日常生活に戻ってくるまでの日々を、飄々(ひょうひょう)と描く小説。もちろん私小説と捉えてもいいだろう。決して楽観できる状況ではないのに、四元さんの書き方はいつもかすかなユーモアをたたえている。

たとえば、前立腺を手術した場合の後遺症は? と医者に尋ねたら、「主に尿漏れと性的不能です」という返事。「あはははは、私は笑った」と四元さんは書く。生きるか死ぬかの話なのに、「漏らすか立つか」の話になっているのがおかしい、と。「漏れと萎えマフラーのごとく靡(なび)かせて三つ子の魂冥途の飛脚」。挿入される歌も秀逸だ。
前立腺歌日記 / 四元 康祐
前立腺歌日記
  • 著者:四元 康祐
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(290ページ)
  • 発売日:2018-11-29
  • ISBN-10:406513806X
  • ISBN-13:978-4065138069
内容紹介:
長年ドイツで暮らす「私」は、ある日、前立腺がんと診断された。手術、リハビリセンターでの3週間、その後の放射線治療、そして得たものは、臍の下の空洞と…。がんの話がこんなに面白くてよいのだろうか…。ドイツ在住の詩人が瓢々と綴った闘病私/詩小説。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2018年2月6日

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