書評
若島 正「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>近藤 滋『エッシャー完全解読―なぜ不可能が可能に見えるのか』(みすず書房) <2>D・A・ミラー、佐藤 元状訳『ヒッチコックをさがせ!―超近接的映画鑑賞(トゥークロース・ビューイング)のすすめ』(慶應義塾大学出版会) <3>柴崎 友香『帰れない探偵』(講談社)
2025年「この3冊」
<1>近藤 滋『エッシャー完全解読―なぜ不可能が可能に見えるのか』(みすず書房)
<2>D・A・ミラー、佐藤 元状訳『ヒッチコックをさがせ!―超近接的映画鑑賞(トゥークロース・ビューイング)のすすめ』(慶應義塾大学出版会)
<3>柴崎 友香『帰れない探偵』(講談社)
<1>は、「なぜ不可能が可能に見えるのか」という謎を文字どおりに解いている点で、巷(ちまた)にあふれる謎解き本とは一線を画している。とりわけ、主題とは無関係に見える細部にも注目しているのは、小説を読み解くような感触がある。エッシャーに対する著者の熱意が読者にも感染する、今年の一推し本。
十年以上も前のこと、来日した文学研究者からぜひ読めとすすめられたのがD・A・ミラーの『見知らぬ乗客』論だった。そのヒッチコック論をまとめたのが、やはり著者の異様な情熱を感じる<2>で、「遠読」に対抗するような「超近読」には大いに驚かされること請け合い。
小説の中では<3>を推す。近未来小説の形を借りながら、過去、現在、未来をひとつの視野に収める、小説の大胆な冒険として読んだ。
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