前書き

『正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版]』(祥伝社)

  • 2021/10/04
正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版] / おおたとしまさ
正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版]
  • 著者:おおたとしまさ
  • 出版社:祥伝社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(232ページ)
  • 発売日:2021-09-01
  • ISBN-10:4396617623
  • ISBN-13:978-4396617622
内容紹介:
子どもの「いいな」に「いいね」しよう。グローバル化、AI時代、ジェンダー、人権意識、自己決定力……子どもが育つ珠玉のことばの数々をぎゅっと凝縮した決定版----------------------------… もっと読む
子どもの「いいな」に「いいね」しよう。
グローバル化、AI時代、ジェンダー、人権意識、自己決定力……
子どもが育つ珠玉のことばの数々をぎゅっと凝縮した決定版
---------------------------------------------------------
・弁当には好きなおかずだけ入れればいい
・「ふざけ」「いたずら」「ずる」「脱線」を止めないで!
・親の不安に耐える力が、子どもの自由な人生につながる
・「答え」は子どもの中にある ……etc
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はじめに――それは子どもの問題ではありません
序 章 「これからの時代」を生きる力
第1章 「グローバル」なんて怖くない
第2章 「進歩する技術」を味方につける
第3章 「ジェンダー」に囚われない
第4章 「人権意識」を身につける
第5章 人生を「自分で決める」ために
第6章 焦らずに「土台」をつくる
第7章 「すごい親」より「いい親」がいい
終 章 子どもを「見る」ということ
おわりに――「答え」は子どもの中にある
グローバル化、AI時代、ジェンダー、人権意識、自己決定力……。
先の見えないこれからの時代、親は子どもにどう向き合えばいいのでしょうか。
そんな疑問に答えるため、教育ジャーナリストのおおたとしまささんが、ベテラン先生たちの珠玉の言葉の数々を、21世紀のど真ん中を生きる子どもの親として心得ておくべきポイントとしてまとめました。
22校の名門校の先生たちからのアドバイスをぎゅっと凝縮した新刊『正解のない時代の親たちへ』から「はじめに」を公開します。
 

それは子どもの問題ではありません

子どもの「自己肯定感」を下げてしまう親に共通する発想とは?

「親世代の成功事例が通用しないであろう未来に子どもが変化に対応して活躍する人材になるには、親として何を大切にすればよいのか?」と聞かれることが増えています。

子育てに迷ったり悩んだりするのは古今東西の親の性。しかもいま時代の変化は加速度的に速まっていて、親世代の常識が通用しなくなってきているともいわれます。不安が増すのも当然です。

実際、将来役立ちそうなスキルを子どもに身につけさせる方法やら親が望む方向に子どもが自ら歩み出すように仕向ける方法やらを論じる記事を、特にインターネットでよく見かけます。子育ての記事というよりも、子どもを思い通りにデザインあるいは操作するためのマニュアルに見えます。

しかし冒頭の問いに本当に答えるためには、問いの立て方から問い直さなければならないと私は思います。

まず、「活躍する人材」という言葉から想起するイメージはひとによってさまざまであるはずです。

聖書でいうところの「地の塩」となり目立たないけれど着実に世の中の役に立つことをイメージするひともいれば、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)のようなグローバル企業で高い報酬を受け取りいわゆる〝勝ち組〟になることをイメージするひともいるかもしれません。ゴールのイメージがひとそれぞれなのに「何を大切にすればよいのか?」という疑問に一概には答えられません。

また「人材」という言葉がいかがわしい。

もともとは生きていた樹木を家や燃料などなんらかの目的に使用するために切り倒し枝葉を落とし皮を剥いだものを「木材」と呼びます。もともとは生きていた動物や植物を食用にするために殺し切り刻んで調理しやすい状態にしたものを「食材」と呼びます。「人材」にも同じニュアンスがあります。

そもそも「人材育成」と「教育」は似て非なるものです。「人材育成」とは、「この組織を機能させるためにはここにこういう部品が必要だから、それに合致する部品をつくろう」という目的ありきの発想。「教育」とは、「子どもの人格を尊重し、社会との関わりのなかでその人格を高め、幸せに生きていけるようにしよう」という子どもありきの発想。

人材育成的な発想で子どもを育てようとすると、子どもの自己肯定感は下がります。目的ありきの発想で、人格が二の次にされているのだから当然です。つまり「活躍する人材」を目的とする冒頭の問いに答えること自体が子どもの自己肯定感を下げる手助けをすることになるわけだから、私としてはこの問いに答えることはできません。

さらに「親世代の成功事例が通用しないであろう未来」の部分は二重の意味でナンセンスです。

親世代の成功事例が子どもの世代においても有効だった時代など、むしろ例外的にしか存在していません。そうでなければ世の中は〝発展〟できませんから。それでも人間は何万年も世代を超えて生きてきました。つまり子どもが「親世代の成功事例が通用しないであろう未来」を生きることはいつの時代もデフォルト(初期設定)であり、それを心配すること自体が、まずナンセンスなのです。

そもそも生き物の本質とは変化に対応することですから、人間だって変化に対応できるんです。大人がよほど余計な「人材育成」をしてしまわなければ。しかも子どもたちは、自分たちに合うように自分たちで新しい社会の秩序をつくっていくことができます。大人がよほど余計な「負の遺産」を残さなければ。つまり新世代が自分たちで構築した社会秩序こそが、過去の世代から見れば「親世代の成功事例が通用しないであろう未来」に見えるだけ。そこを子どもたちがどう生きていけばいいかなんて親世代が気を揉むこと自体が、さらにナンセンスなのです。

結論として冒頭の問いに対する私からの答えは、「親としてなぜこのような問いに囚われてしまうのかを考えてほしい」です。課題は、子どもではなく親の中にあるのです。

 

21世紀のど真ん中を生きる子どもの親として心得ておくべきこと

ではその課題の本質と解決策は何か。

それを探るべく、これまで何千人もの親子を見てきた名門校のベテラン教師たちにアドバイスを求めました。

集まった珠玉の言葉の数々を原材料にして、21世紀のど真ん中を生きる子どもの親として心得ておくべきエッセンスを精製しながら濃縮しました。編集というよりは蒸留に近い作業でした。さらに、私自身の教員、心理カウンセラー、親としての経験も踏まえ、私の言葉でところどころに補助線を添えつつブレンドしました。

実は本書は、たいへん好評をいただいた『21世紀の「男の子」の親たちへ』と『21世紀の「女の子」の親たちへ』(いずれも祥伝社)を元にしています。その2冊の内容を混ぜ合わせて、さらにエッセンスを濃縮した、いわば二段仕込み製法のエッセンシャル版です。

序章で「これからの時代」のとらえ方を提示し、第1章では「グローバル」の本質を探ります。第2章はITやAIといった両刃の剣とどう向き合うか、第3章は現代社会の大きな課題であるジェンダー・バイアス(性別に関する偏見)、第4章は人間の尊厳、第5章は自由、第6章は教育の優先順位について。第7章では「いい親」とは何かに迫り、終章で本書のエッセンスの最後の一滴をすくいとります。

第1章から第7章は、見出しごとに独立した話になっていますので、気になる見出しのページから読んでいただけます。もちろん前から順番に読めば、より理解が深まるように構成されています。

親の立場からすれば耳の痛い話も多いかもしれません。しかしそれ以上にきっと、「あ、それでいいんだ」と肩の力が抜ける瞬間があるはずです。

正解がない時代の親たちへ。

「変えられるものを変える勇気と、変えられないものを受け入れる平静さと、それらを峻別する叡智が、もたらされますように」(ラインホルド・ニーバー)

[書き手]著者 おおたとしまさ
正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版] / おおたとしまさ
正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版]
  • 著者:おおたとしまさ
  • 出版社:祥伝社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(232ページ)
  • 発売日:2021-09-01
  • ISBN-10:4396617623
  • ISBN-13:978-4396617622
内容紹介:
子どもの「いいな」に「いいね」しよう。グローバル化、AI時代、ジェンダー、人権意識、自己決定力……子どもが育つ珠玉のことばの数々をぎゅっと凝縮した決定版----------------------------… もっと読む
子どもの「いいな」に「いいね」しよう。
グローバル化、AI時代、ジェンダー、人権意識、自己決定力……
子どもが育つ珠玉のことばの数々をぎゅっと凝縮した決定版
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・弁当には好きなおかずだけ入れればいい
・「ふざけ」「いたずら」「ずる」「脱線」を止めないで!
・親の不安に耐える力が、子どもの自由な人生につながる
・「答え」は子どもの中にある ……etc
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はじめに――それは子どもの問題ではありません
序 章 「これからの時代」を生きる力
第1章 「グローバル」なんて怖くない
第2章 「進歩する技術」を味方につける
第3章 「ジェンダー」に囚われない
第4章 「人権意識」を身につける
第5章 人生を「自分で決める」ために
第6章 焦らずに「土台」をつくる
第7章 「すごい親」より「いい親」がいい
終 章 子どもを「見る」ということ
おわりに――「答え」は子どもの中にある

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