内容紹介

『共感と商い』(祥伝社)

  • 2023/03/01
共感と商い / 八木 隆裕 (開化堂 六代目)
共感と商い
  • 著者:八木 隆裕 (開化堂 六代目)
  • 出版社:祥伝社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(232ページ)
  • 発売日:2023-03-01
  • ISBN-10:4396618018
  • ISBN-13:978-4396618018
内容紹介:
手づくり茶筒の老舗「開化堂」創業明治8年、つくるモノは当時のままの茶筒。……にもかかわらず、●なぜ、令和の現在でもうまく続いているのか?●ティーバッグやペットボトルの普及で茶筒… もっと読む
手づくり茶筒の老舗「開化堂」

創業明治8年、つくるモノは当時のままの茶筒。

……にもかかわらず、

●なぜ、令和の現在でもうまく続いているのか?
●ティーバッグやペットボトルの普及で茶筒がないお宅も多い中、どうして近年、話題になってきたのか?
●どうやって、海外でも売れるようになったのか?
●どうすることで、開化堂を応援してくれるコアな人たちが生まれたのか?
etc.
***********************************************
商いをやめる寸前だった老舗が
世界中で推されるようになるまでの
やさしくてすごい商売論。
***********************************************
どんな業態であっても当てはまる、
時代やお金に振り回されずに、
長くゆっくりと繁栄する秘訣をお伝えします。

この本の目次(一部を抜粋)

はじめに:疲弊なく自然体で、仕事も個人も営みを続けていくために
 ・150年変わらずに茶筒をつくり、商う仕事
 ・社会が変わっても、人には変わらないものがある
 ・小さく、急がず、人間らしく               etc.

第1章:自分たちの価値を見直し、見極めていく
 ・開化堂が窮地に陥っていたあの頃
 ・「哲学」や「空気感」から伝えることへの変化
 ・時間をかけることで、言葉にならないものを身に纏う
 ・売上を追わずに、つくる上限を決める
 ・「物柄よきもの」を目指す                etc.

第2章:働いてくれる人を「家族」のように育んでいく
 ・独自性は、家族的な環境から生まれる
 ・働いてくれる人は、20人までにとどめる
 ・別の何かを使って「らしさ」をチューニングする
 ・「心の賃金」を増やしていく
 ・働いてくれる人たちの家族を犠牲にしない         etc.

第3章:「家族」の輪を世界中に広げていく
 ・儲けの額や相手の大きさで判断をしない
 ・海外にも「家族」をつくっていく
 ・誰を通じて、どこから海外に入っていくか
 ・互いの間で、貸し借りを持ち合う
 ・世界に家族ができたあと、お客様との関係が始まる     etc.

第4章:「推してくれる人」をつくるために必要な伝え方
 ・パリでの失敗で学んだこと
 ・単なるファンと「推してくれる人」の違い
 ・「お金で成り立つ関係」以上の何かを見つける
 ・「お客様が商品の中に印象的に存在できる」ように伝える
 ・ブームにせずに、自分のローカルエリアをつくる      etc.

第5章:長くゆっくりと繁栄していくために
 ・「変えていくもの」と「守
京都で約150年続く、手づくり茶筒の老舗「開化堂」。
創業以来同じ製法を守りながら、創業当時と同じ茶筒を手づくりしています。

しかし、そんな茶筒の商いは、
・大量生産の安価な茶筒の普及
・ティーバッグやペットボトルのお茶への移行
・お中元やお歳暮といった文化の衰退
などにより、時代の流れに合わないものとなっていました。
一時は先代までで工房を畳むことも検討されていたのです。

しかし、そうした厳しい状況の中で、
・開化堂としての「らしさ」を見つめ直し、
・働いてくれる職人全員で、その「開化堂らしさ」を体現し、
・開化堂の茶筒の価値に共感してくださる国内外のバイヤーさんたちとの関係性を築き、
・お客様との間で、一度の購入だけで終わらないような伝え方を模索し、
・「変えるべきこと」と「守るべき価値」を見極めた結果、
今では、世界中に開化堂の茶筒を「推してくださる人」が生まれることとなりました。

では、「人口減少による国内需要の減少」や「安い日本」といった課題を抱え、「モノが売れない時代」と言われて久しい今の時代に、国境を越えてお客様から愛されるような企業・モノづくりに転換していくためには、どうしたらいいのでしょうか?

規模は小さいながらも世界で知られる存在となった、開化堂。
その六代目当主である八木隆裕さんが、開化堂の地道な取り組みや、
海外での商いが軌道に乗るまでを著した書籍『共感と商い』より、
今回、特別に一部を抜粋して紹介します。
 

時間をかけることで、言葉にならないものを身に纏う

いくら生まれたときから見てきた家業とはいえ、いざ自分が当事者になって開化堂に戻ってみると、そこには想像を超える大変さが待っていました。

何より「この仕事には先がない」と言った父も、息子が職人となれば話は変わります。
職人は、「見て覚えろ」の世界ですから、すべて横で見ながら習得していくよう命じられたのです。

そこからは見よう見まねで作業をしては、「あかん」と言われ、また見て同じ作業をすることの繰り返し。
僕はそんな修業を、5年以上、繰り返すことになりました。

ただ、父が僕に職人としての地道な修業をさせ、年月をかけさせたことは、あとになってとても大きな意味があったことを痛感します。
 
修業をし、「見て覚えろ」によって手で仕事を覚えていく中で、「これは開化堂らしい」「いいモノができた」というような、「らしさ」の感覚が体でつかめてくるようになったのです。
 
それは、自分から学ぼうとしないで最初から教えられていては、決してわからないものでした。
自分から学ばないと、「らしい」ことなんて覚えられなかったのです。

この辺の感覚を言葉で伝えるのは、とても難しいことだと思います。
たしかに技術を教え込めば、器用な人なら、もっと早くブリキの板から茶筒をつくれるようになるかもしれません。

しかし、それでは頭で覚えても、体感として覚えたことにはならない。
これは、有形のモノをつくる人だけでなく、無形のモノをつくる人でも同じです。

開化堂でいえば、ただつくれるだけでは、150年をかけて蓄積してきたモノづくりの在り方のような言外のニュアンスが、体得できてはいないのです。
 

長く愛される商いを目指すなら、「修業は必要」

 短期間商売をして、短期間で売り抜けるタイプのビジネスを考えるのであれば、昨今の「修業不要論」でもいいのかもしれません。

でも、長く続く商いを目指すのであれば、やはり有形無形を問わず、商品の質に立ち返らなくてはなりません。

付け焼き刃でつくられたモノに、表面的にカッコいいマーケティングの演出をつけても、使ったお客様はちゃんとモノの質を見抜きますから、じきに廃れていってしまうのです。

ですから、自分たちのモノづくりとは何なのかを吟味し、内面からにじみ出るような美しさが備わるように、丁寧に質の高いモノをつくっていく。

そのためにも、自分たちのアイデンティティーを、そこで働く人たちが身に纏い、体を使って自分自身に染み込ませていく。

私たちは、職人でありながら店舗にも立つので、父からは「うちは職人と違うで、職商売やで」と言われたものですが、モノをつくり、売る人が「開化堂のにおい」を纏うことで、はじめてお客様に伝わるものがあります。

目には見えないものですが、たしかに感じるものだからこそ、地道に時間をかけて、同じことを繰り返しながら、技術を修得する。

効率ばかりを求めず、そうした時期や過程をしっかり体感覚で経験して、たしかなモノをつくることが、言葉の外で伝わる何かを生み出していけるようになる、意味のあることなのだと感じています。

【書き手】八木隆裕(開化堂六代目)
本稿は『共感と商い』(祥伝社)より抜粋のうえ作成
共感と商い / 八木 隆裕 (開化堂 六代目)
共感と商い
  • 著者:八木 隆裕 (開化堂 六代目)
  • 出版社:祥伝社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(232ページ)
  • 発売日:2023-03-01
  • ISBN-10:4396618018
  • ISBN-13:978-4396618018
内容紹介:
手づくり茶筒の老舗「開化堂」創業明治8年、つくるモノは当時のままの茶筒。……にもかかわらず、●なぜ、令和の現在でもうまく続いているのか?●ティーバッグやペットボトルの普及で茶筒… もっと読む
手づくり茶筒の老舗「開化堂」

創業明治8年、つくるモノは当時のままの茶筒。

……にもかかわらず、

●なぜ、令和の現在でもうまく続いているのか?
●ティーバッグやペットボトルの普及で茶筒がないお宅も多い中、どうして近年、話題になってきたのか?
●どうやって、海外でも売れるようになったのか?
●どうすることで、開化堂を応援してくれるコアな人たちが生まれたのか?
etc.
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商いをやめる寸前だった老舗が
世界中で推されるようになるまでの
やさしくてすごい商売論。
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どんな業態であっても当てはまる、
時代やお金に振り回されずに、
長くゆっくりと繁栄する秘訣をお伝えします。

この本の目次(一部を抜粋)

はじめに:疲弊なく自然体で、仕事も個人も営みを続けていくために
 ・150年変わらずに茶筒をつくり、商う仕事
 ・社会が変わっても、人には変わらないものがある
 ・小さく、急がず、人間らしく               etc.

第1章:自分たちの価値を見直し、見極めていく
 ・開化堂が窮地に陥っていたあの頃
 ・「哲学」や「空気感」から伝えることへの変化
 ・時間をかけることで、言葉にならないものを身に纏う
 ・売上を追わずに、つくる上限を決める
 ・「物柄よきもの」を目指す                etc.

第2章:働いてくれる人を「家族」のように育んでいく
 ・独自性は、家族的な環境から生まれる
 ・働いてくれる人は、20人までにとどめる
 ・別の何かを使って「らしさ」をチューニングする
 ・「心の賃金」を増やしていく
 ・働いてくれる人たちの家族を犠牲にしない         etc.

第3章:「家族」の輪を世界中に広げていく
 ・儲けの額や相手の大きさで判断をしない
 ・海外にも「家族」をつくっていく
 ・誰を通じて、どこから海外に入っていくか
 ・互いの間で、貸し借りを持ち合う
 ・世界に家族ができたあと、お客様との関係が始まる     etc.

第4章:「推してくれる人」をつくるために必要な伝え方
 ・パリでの失敗で学んだこと
 ・単なるファンと「推してくれる人」の違い
 ・「お金で成り立つ関係」以上の何かを見つける
 ・「お客様が商品の中に印象的に存在できる」ように伝える
 ・ブームにせずに、自分のローカルエリアをつくる      etc.

第5章:長くゆっくりと繁栄していくために
 ・「変えていくもの」と「守

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