書評

『なぜヒトだけが老いるのか』(講談社)

  • 2023/10/11
なぜヒトだけが老いるのか / 小林 武彦
なぜヒトだけが老いるのか
  • 著者:小林 武彦
  • 出版社:講談社
  • 装丁:新書(224ページ)
  • 発売日:2023-06-22
  • ISBN-10:4065326400
  • ISBN-13:978-4065326404
内容紹介:
人間以外の生物は、老いずに死ぬ。ヒトだけが獲得した「長い老後」には重要な意味があったーー。生物学で捉えると、「老い」の常識が覆る!【ベストセラー『生物はなぜ死ぬのか』著者によ… もっと読む
人間以外の生物は、老いずに死ぬ。
ヒトだけが獲得した「長い老後」には重要な意味があったーー。
生物学で捉えると、「老い」の常識が覆る!


【ベストセラー『生物はなぜ死ぬのか』著者による待望の最新作!】

・産卵直後に死ぬサケ、老いずに死ぬゾウ、死ぬまで子が産めるチンパンジー
・ヒトは人生の40%が「老後」
・長寿遺伝子の進化
・寿命延長に影響した「おばあちゃん仮説」と「おじいちゃん仮説」
・老化するヒトが選択されて生き延びた理由
・ミツバチとシロアリに学ぶ「シニアの役割」
・昆虫化するヒト
・不老長寿の最新科学
・85歳を超えたら到達できる「老年的超越」というご褒美
・老化はどうやって引き起こされるのか
・生物学者が提言する「最高の老後の迎え方」とは ……ほか

「老いの意味」を知ることは「生きる意味」を知ることだった。
動物はヨボヨボにならない。サケは産卵すると脳が縮んですぐ死ぬ。動物はたいてい元気なままコテンと死に、誰かに食べられてしまう。

ヒトだけが老いても長く生きるのはなぜか。子育ては手間がかかる。《おばあちゃんが元気で長生きな家族ほど…子だくさん》で、進化に有利だった(おばあちゃん仮説)。壊れた遺伝子を修復する能力も高くなった。集団の知恵を蓄積し結束をはかるのに老人は役立ったのだ。

著者は言う。生まれるのは偶然でも死は必然。生物が進化するのに必要な、究極の利他的行為だ。遠からず死ぬと意識するシニアは、《次世代を育て集団をまとめる調整役になれる》。高齢化社会は生物進化の到達点、相応の利点があるわけだ。

本書の提案は、《「老い」を老いずに生き》よう。前向きだ。子孫を残し仕事に励む現役世代から、シニアは一歩退いている。人生のごほうびに当たる時期だ。だが能力はまだまだ高い。現役に混じって働ける。だから少子化のいま、年齢で区切る定年は不合理だ。公共のためにも活動し、《老年的超越》の境地に近づくひともいる。進化生物学の裏付けのある、元気の湧くシニア論だ。
なぜヒトだけが老いるのか / 小林 武彦
なぜヒトだけが老いるのか
  • 著者:小林 武彦
  • 出版社:講談社
  • 装丁:新書(224ページ)
  • 発売日:2023-06-22
  • ISBN-10:4065326400
  • ISBN-13:978-4065326404
内容紹介:
人間以外の生物は、老いずに死ぬ。ヒトだけが獲得した「長い老後」には重要な意味があったーー。生物学で捉えると、「老い」の常識が覆る!【ベストセラー『生物はなぜ死ぬのか』著者によ… もっと読む
人間以外の生物は、老いずに死ぬ。
ヒトだけが獲得した「長い老後」には重要な意味があったーー。
生物学で捉えると、「老い」の常識が覆る!


【ベストセラー『生物はなぜ死ぬのか』著者による待望の最新作!】

・産卵直後に死ぬサケ、老いずに死ぬゾウ、死ぬまで子が産めるチンパンジー
・ヒトは人生の40%が「老後」
・長寿遺伝子の進化
・寿命延長に影響した「おばあちゃん仮説」と「おじいちゃん仮説」
・老化するヒトが選択されて生き延びた理由
・ミツバチとシロアリに学ぶ「シニアの役割」
・昆虫化するヒト
・不老長寿の最新科学
・85歳を超えたら到達できる「老年的超越」というご褒美
・老化はどうやって引き起こされるのか
・生物学者が提言する「最高の老後の迎え方」とは ……ほか

「老いの意味」を知ることは「生きる意味」を知ることだった。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2023年8月19日

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