そしてまた、哲学とは必ずしも心を静めるものではなく、ときに不安をかきたてる。心を慰めるどころか動揺させることもあるのだ。「処方箋的哲学」への熱狂の裏には、もうひとつ、哲学とは世界や他人、自分自身との良好な関係をもつための知恵なのだという考え方が潜んでいる。だが、実際のところ、哲学はしばしば静謐な休息と同じぐらいに、静寂を打ち壊す蛮勇〔原注:Jean-Michel Besnier, Réflexions sur la sagesse, Pommier.(未邦訳)〕を求めてきた。だからこそ、哲学は習慣や偏見の快適さを打ち破る最良の薬でもあるのだ。