書評

『大きな字で書くこと/僕の一〇〇〇と一つの夜』(岩波書店)

  • 2023/12/31
大きな字で書くこと/僕の一〇〇〇と一つの夜 / 加藤 典洋
大きな字で書くこと/僕の一〇〇〇と一つの夜
  • 著者:加藤 典洋
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:文庫(350ページ)
  • 発売日:2023-03-15
  • ISBN-10:4006023502
  • ISBN-13:978-4006023508
内容紹介:
自分自身のこと、父のこと、友人たちのこと、かつて関わった学生運動のこと、忘れられない記憶のこと……批評家・加藤典洋が自らを回顧する連載を中心に、発病後も書き続け、遺された最後のことばたち。同時期に書かれ、没後に私家版として刊行されたみずみずしい詩集「僕の一〇〇〇と一つの夜」と併録。(解説=荒川洋治)
没後出版された晩年のエッセイ集と私家版詩集が、合本で文庫になった。読めば魂が揺さぶられる。

加藤典洋氏は若い頃、小説の才能があった。≪君の本質はそれ/小説を書いたこと/でもその後書きつげなかったこと≫(「僕の本質」)。批評家に転じた氏が、病床で書きとめた詩集が『僕の一○○○と一つの夜』である。

私の代わりに/私のパジャマが吊されている/上半身と下半身は別にされて/…/針金のハンガーにかけられ/…/並んでいる (「パジャマと私」)

今夜は鯖のミソ煮/妻がレシピを見ながら作ってくれる/私が所望し/妻が受け入れた/鯖のミソ煮がどんな出来か/それは作られてみなければ誰にも/わからぬ (「鯖のミソ煮」)

戦後の現代詩の気取った決まりをすべてかなぐり捨てた、容赦のない抒情がそこにある。批評家ならではの詩情。

こんなに素直に、そして切実に、言葉を紡ぐ機会が生涯に幾度あるだろう。その機会があったとして、誰がその任に堪えるだろう。解説は荒川洋治氏。≪加藤さんの文章は、いつもとてもきれいで、…ぱっと、明るいのだ≫。同感である。哀悼。
大きな字で書くこと/僕の一〇〇〇と一つの夜 / 加藤 典洋
大きな字で書くこと/僕の一〇〇〇と一つの夜
  • 著者:加藤 典洋
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:文庫(350ページ)
  • 発売日:2023-03-15
  • ISBN-10:4006023502
  • ISBN-13:978-4006023508
内容紹介:
自分自身のこと、父のこと、友人たちのこと、かつて関わった学生運動のこと、忘れられない記憶のこと……批評家・加藤典洋が自らを回顧する連載を中心に、発病後も書き続け、遺された最後のことばたち。同時期に書かれ、没後に私家版として刊行されたみずみずしい詩集「僕の一〇〇〇と一つの夜」と併録。(解説=荒川洋治)

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2023年4月15日

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