書評

『記憶の海辺 ― 一つの同時代史 ―』(青土社)

  • 2024/07/13
記憶の海辺 ― 一つの同時代史 ― / 池内 紀
記憶の海辺 ― 一つの同時代史 ―
  • 著者:池内 紀
  • 出版社:青土社
  • 装丁:単行本(355ページ)
  • 発売日:2017-12-01
  • ISBN-10:4791770234
  • ISBN-13:978-4791770236
内容紹介:
あるドイツ文学者の、物語のようなホントウの話
「一〇歳のときの朝鮮戦争から、カフカ訳を終えた六〇歳までをたどっている。
おぼつかない自分の人生の軌跡をたどって何を実証しようとしたのだろう。
念願としたのは私的な記録を通しての時代とのかかわりだった。」——あとがきより

池内紀、最初で最後の自伝的回想録。

生きてきた軌跡を辿る

ドイツ文学者でエッセイストの池内紀の最新エッセイ集。ドイツ文学者というよりも随想をまとめた色合いが強い。

副題の「一つの同時代史」が示す通り、著者の生きてきた軌跡が、飾らない文章で辿り直されている。

ビリヤードの話もウィーンの話も出てくるが、やっぱり巻末の「海辺のカフカ」というエッセイが印象深かった。タイトルはもちろん村上春樹の小説に関係するけれど、そんなこととは無関係に、海辺で撮影されたカフカの写真がエッセイの中に挿入されている。1914年7月のクレジット。はにかんで笑うカフカの写真は、カフカを何より官能的な作家と捉える池内の文章にピタリと符合している。



記憶の海辺 ― 一つの同時代史 ― / 池内 紀
記憶の海辺 ― 一つの同時代史 ―
  • 著者:池内 紀
  • 出版社:青土社
  • 装丁:単行本(355ページ)
  • 発売日:2017-12-01
  • ISBN-10:4791770234
  • ISBN-13:978-4791770236
内容紹介:
あるドイツ文学者の、物語のようなホントウの話
「一〇歳のときの朝鮮戦争から、カフカ訳を終えた六〇歳までをたどっている。
おぼつかない自分の人生の軌跡をたどって何を実証しようとしたのだろう。
念願としたのは私的な記録を通しての時代とのかかわりだった。」——あとがきより

池内紀、最初で最後の自伝的回想録。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2018年1月18日

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