書評

『もう生まれたくない』(講談社)

  • 2025/03/01
もう生まれたくない / 長嶋 有
もう生まれたくない
  • 著者:長嶋 有
  • 出版社:講談社
  • 装丁:文庫(272ページ)
  • 発売日:2021-11-16
  • ISBN-10:4065250560
  • ISBN-13:978-4065250563
内容紹介:
マンモス大学の診療室に勤める春菜、シングルマザーの美里、二人の謎めいた友人の神子。震災の年の夏、「偶然の訃報」でつながった彼女たちの運命が動き始める――。新聞に載る死。テレビで騒が… もっと読む
マンモス大学の診療室に勤める春菜、シングルマザーの美里、二人の謎めいた友人の神子。震災の年の夏、「偶然の訃報」でつながった彼女たちの運命が動き始める――。
新聞に載る死。テレビで騒がれる死。どこかでひっそり終わった死。有名人の死。身近な人の死。名も知らぬ遠い国の誰かの死。
そのどれもが身近で、私たちの人生と隣り合わせにある。死を描くことで今を生きることの意味を見出す、著者新境地。

死が起こす波すくい取る

この小説を読んでいて思い出したのは、東日本大震災の後、名前を知っている人も、そうではない人でも、訃報が届くと、それまでとは違った衝撃があったということ。死に対して過敏になっている部分が誰にもあったのではないか。

この小説の舞台は、震災の後の3年間。スティーブ・ジョブズや元X JAPANのTAIJIなど、亡くなった人のことが登場人物の何気ない日常に入り込んでくる。マンモス大学で突然ナースの恰好をさせられる春菜、一人で息子を育てるゲームオタクの美里、美人清掃員の神子。彼らの日常を繊細な手つきで描きながら、人の死が起こす小さな波を掬(すく)い取る佳作。長嶋ワールド全開。あの頃の感覚が甦る。
もう生まれたくない / 長嶋 有
もう生まれたくない
  • 著者:長嶋 有
  • 出版社:講談社
  • 装丁:文庫(272ページ)
  • 発売日:2021-11-16
  • ISBN-10:4065250560
  • ISBN-13:978-4065250563
内容紹介:
マンモス大学の診療室に勤める春菜、シングルマザーの美里、二人の謎めいた友人の神子。震災の年の夏、「偶然の訃報」でつながった彼女たちの運命が動き始める――。新聞に載る死。テレビで騒が… もっと読む
マンモス大学の診療室に勤める春菜、シングルマザーの美里、二人の謎めいた友人の神子。震災の年の夏、「偶然の訃報」でつながった彼女たちの運命が動き始める――。
新聞に載る死。テレビで騒がれる死。どこかでひっそり終わった死。有名人の死。身近な人の死。名も知らぬ遠い国の誰かの死。
そのどれもが身近で、私たちの人生と隣り合わせにある。死を描くことで今を生きることの意味を見出す、著者新境地。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2017年7月2日

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