書評
『月夜にランタン』(筑摩書房)
話題のアレコレ斬り尽くす
文芸評論家の斎藤美奈子は、基本的に「調べ魔」である。あれこれ調べてみることに、たぶんいちばんの快楽を覚えるタイプの書き手ではないか。これまでも本業の文芸評論からのスピンオフ企画はいろいろあった。典型的なのは『冠婚葬祭のひみつ』とか。小説や批評を読むさいに気になった文化事象について書いた本もまた興味深いのである。
この本も体裁はそんな感じ。世の中の事象を斬る! というか、本を介して世の中の動きに接近し、斎藤一流の刀を振り下ろす。この5年間ほどのあいだに話題になった出来事について言及している。ケータイ小説、ロスジェネと『蟹工船』、『ミシュラン』、白洲次郎、「萌(も)え系勉強本」などなど。
一読、やはり文芸評論っぽいものに魅力を感じた。たとえば、村上春樹『1Q84』と大江健三郎の『水死』。共通項として「闘う女」を挙げる。性暴力被害を受け、そこから立ち直るために「闘う女」となった経緯や、最後は妊娠することで「聖化」されることなどを、独特の語りで分析。
ライヴ感いっぱいの文章に脚注を添えて、現時点での分析も加味。至れり尽くせりの文化時評である。
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