書評

『目的をもたない意志 増補版 ――山川方夫エッセイ・コレクション』(筑摩書房)

  • 2026/09/10
目的をもたない意志 増補版 ――山川方夫エッセイ・コレクション / 山川 方夫
目的をもたない意志 増補版 ――山川方夫エッセイ・コレクション
  • 著者:山川 方夫
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:文庫(320ページ)
  • 発売日:2025-04-12
  • ISBN-10:4480440208
  • ISBN-13:978-4480440204
内容紹介:
大江健三郎、アントニオーニ、若尾文子、東京、戦争、恋愛論……山川方夫の思考のエッセンスを味わうことができる、唯一のエッセイ集。新たな7篇と妻・山川みどり氏による回想を収録した増補版… もっと読む
大江健三郎、アントニオーニ、若尾文子、東京、戦争、恋愛論……
山川方夫の思考のエッセンスを味わうことができる、唯一のエッセイ集。
新たな7篇と妻・山川みどり氏による回想を収録した増補版。

「私はいまはっきりと『文学』の価値を信じている。『文学』は、おそらく、人間の尊厳の補償である」(「灰皿になれないということ」)
「一人きりの人間は、じつは『人間』ではない。人間を『人間』にする最小の単位は一人ではなく、二人である」(「正常という名の一つの狂気」)

「『文学』は私にとり、まず私の存在のしかたであり、態度なのだ」。大江健三郎、サルトル、石原慎太郎、若尾文子、日劇、『去年マリエンバートで』、『キングコング対ゴジラ』……文学はもちろん映画や自由、恋愛まで作家がクールな文体で語るエッセイ集。新たな7篇のほか、妻・山川みどりによる作家との出会いや夫婦の生活をめぐるエッセイ4篇を増補した決定版。

【目次】
第一章 灰皿になれないということ
灰皿になれないということ
〝自由〟のイメージ
永井龍男氏の「一個」 ―― 〈作家論の試み〉
サルトルとの出逢い
早春の記憶 ―― グレアム・グリーンをめぐって
大江健三郎『われらの時代』
高橋和巳『悲の器』
村松剛『文学と詩精神』
獅子文六『町ッ子』
可笑しい奴 ―― 西島大君のこと
江藤淳氏について
中原弓彦氏について
『遠来の客たち』の頃 ―― 曾野綾子氏について
石原慎太郎氏について

第二章 わが町・東京
わが町・東京
神話
「日々の死」の銀座
正常という名の一つの狂気 ―― 「りゅうれんじん」〈仮題〉の原作者として
恋愛について
日劇 ―― 都会化のシンボル
麻美子と恵子と桐子の青春
海を見る
山を見る――ある心象風景として
「ザ・タリスマン」白書
半年の後……
わがままな由来 ―― ペンネーム誕生記
あの頃
一通行者の感慨
私の良妻論

第三章 目的をもたない意志 ―― 映画をめぐる断章
増村保造氏の個性とエロティシズム ―― 主に『妻は告白する』をめぐって
映画批評家への公開状
目的をもたない意志 ―― マルグリット・デュラスの個性
『情事』の観念性
中途半端な絶望 ―― アントニオーニの新作をめぐって
『二十歳の恋』
『去年マリエンバートで』への一つの疑問
『かくも長き不在』
『シルヴィ』の幻
『肉体市場』
『恋や恋なすな恋』
『オルフェの遺言』
『キングコング対ゴジラ』

付録 『山川方夫全集』月報より 山川みどり
なにもかも忽然と
最初で最後の夏
ようこそ、はるばる二宮へ
三十三年目の二宮

批評家・エッセイストとしての山川方夫 高崎俊夫
ちくま文庫版のための編者あとがき 高崎俊夫

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

小説とはひと味違う鋭い随筆集

佐藤泰志や野呂邦暢、あるいは『昔日の客』の関口良雄のような作家たちの作品が少しずつ復刊されている。素朴に嬉(うれ)しい。地味だけど、背筋のシャンと伸びた作家たちの小説がまた読める。

山川方夫もそんな作家の一人。雑誌「三田文学」では編集長を務め、江藤淳に『夏目漱石論』を書かせた存在として記憶されるが、彼の残した小説は全集でこそ読めるものの、手軽には手に入らない。『愛のごとく』『日々の死』がまた読みたい。そんな人は少なくないと思う。

そんな人に朗報。山川が残したエッセイから厳選した数篇(へん)で編まれた本がこれ。小説ではないが、山川の口調が堪能できる。

とにかく、切れ味が鋭い。作家論も映画論も東京論も、どれも素晴らしい。

石原慎太郎の『太陽の季節』が表象する「若さ」があまりに単純で、作家の「皮膚」にすぎないと断じたり、当時大人気だった映画監督ミケランジェロ・アントニオーニに啖呵を切ったり……。

職人的に構築された小説世界とは、またひとあじ違った文章の世界に触れることで、山川方夫の奥行きを実感した。好企画の一冊。

【単行本】
目的をもたない意志: 山川方夫エッセイ集 / 山川 方夫
目的をもたない意志: 山川方夫エッセイ集
  • 著者:山川 方夫
  • 出版社:清流出版
  • 装丁:単行本(221ページ)
  • 発売日:2011-02-01
  • ISBN-10:4860293517
  • ISBN-13:978-4860293512
内容紹介:
目次 第1章 灰皿になれないということ(灰皿になれないということ “自由”のイメージ 永井龍男氏の『一個』 ほか) 第2章 わが町・東京(わが町・東京 神話 『日々の死』の銀座 ほか) 第3章 目… もっと読む
目次 第1章 灰皿になれないということ(灰皿になれないということ “自由”のイメージ 永井龍男氏の『一個』 ほか) 第2章 わが町・東京(わが町・東京 神話 『日々の死』の銀座 ほか) 第3章 目的をもたない意志—映画をめぐる断章(増村保造氏の個性とエロティシズム 映画批評家への公開状 目的をもたない意志 ほか)

山川 方夫 1930(昭和5)年、東京生まれ。本名は嘉巳。慶応義塾大学仏文科卒業。戦後、第三次『三田文学』の編集長となり、江藤淳に『夏目漱石論』を依頼し、批評家デビューさせたのは有名である。小説家としても57年、『日々の死』によって注目され、『海岸公園』『愛のごとく』などの秀作を発表し、数回、芥川賞候補となる。65年、交通事故のため、急逝

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

目的をもたない意志 増補版 ――山川方夫エッセイ・コレクション / 山川 方夫
目的をもたない意志 増補版 ――山川方夫エッセイ・コレクション
  • 著者:山川 方夫
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:文庫(320ページ)
  • 発売日:2025-04-12
  • ISBN-10:4480440208
  • ISBN-13:978-4480440204
内容紹介:
大江健三郎、アントニオーニ、若尾文子、東京、戦争、恋愛論……山川方夫の思考のエッセンスを味わうことができる、唯一のエッセイ集。新たな7篇と妻・山川みどり氏による回想を収録した増補版… もっと読む
大江健三郎、アントニオーニ、若尾文子、東京、戦争、恋愛論……
山川方夫の思考のエッセンスを味わうことができる、唯一のエッセイ集。
新たな7篇と妻・山川みどり氏による回想を収録した増補版。

「私はいまはっきりと『文学』の価値を信じている。『文学』は、おそらく、人間の尊厳の補償である」(「灰皿になれないということ」)
「一人きりの人間は、じつは『人間』ではない。人間を『人間』にする最小の単位は一人ではなく、二人である」(「正常という名の一つの狂気」)

「『文学』は私にとり、まず私の存在のしかたであり、態度なのだ」。大江健三郎、サルトル、石原慎太郎、若尾文子、日劇、『去年マリエンバートで』、『キングコング対ゴジラ』……文学はもちろん映画や自由、恋愛まで作家がクールな文体で語るエッセイ集。新たな7篇のほか、妻・山川みどりによる作家との出会いや夫婦の生活をめぐるエッセイ4篇を増補した決定版。

【目次】
第一章 灰皿になれないということ
灰皿になれないということ
〝自由〟のイメージ
永井龍男氏の「一個」 ―― 〈作家論の試み〉
サルトルとの出逢い
早春の記憶 ―― グレアム・グリーンをめぐって
大江健三郎『われらの時代』
高橋和巳『悲の器』
村松剛『文学と詩精神』
獅子文六『町ッ子』
可笑しい奴 ―― 西島大君のこと
江藤淳氏について
中原弓彦氏について
『遠来の客たち』の頃 ―― 曾野綾子氏について
石原慎太郎氏について

第二章 わが町・東京
わが町・東京
神話
「日々の死」の銀座
正常という名の一つの狂気 ―― 「りゅうれんじん」〈仮題〉の原作者として
恋愛について
日劇 ―― 都会化のシンボル
麻美子と恵子と桐子の青春
海を見る
山を見る――ある心象風景として
「ザ・タリスマン」白書
半年の後……
わがままな由来 ―― ペンネーム誕生記
あの頃
一通行者の感慨
私の良妻論

第三章 目的をもたない意志 ―― 映画をめぐる断章
増村保造氏の個性とエロティシズム ―― 主に『妻は告白する』をめぐって
映画批評家への公開状
目的をもたない意志 ―― マルグリット・デュラスの個性
『情事』の観念性
中途半端な絶望 ―― アントニオーニの新作をめぐって
『二十歳の恋』
『去年マリエンバートで』への一つの疑問
『かくも長き不在』
『シルヴィ』の幻
『肉体市場』
『恋や恋なすな恋』
『オルフェの遺言』
『キングコング対ゴジラ』

付録 『山川方夫全集』月報より 山川みどり
なにもかも忽然と
最初で最後の夏
ようこそ、はるばる二宮へ
三十三年目の二宮

批評家・エッセイストとしての山川方夫 高崎俊夫
ちくま文庫版のための編者あとがき 高崎俊夫

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2011年5月18日

ALL REVIEWS 書評講座(オンライン受講) ≫オンラインで参加する
現地満席|オンライン参加OK
「読む」側から、 「書く」側へ。
オンライン参加OK/過去回アーカイブ付。
全12回・途中申込OK。豪華講師陣の書評講座、開催中。
  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
陣野 俊史の書評/解説/選評
ページトップへ