書評
『目的をもたない意志 増補版 ――山川方夫エッセイ・コレクション』(筑摩書房)
小説とはひと味違う鋭い随筆集
佐藤泰志や野呂邦暢、あるいは『昔日の客』の関口良雄のような作家たちの作品が少しずつ復刊されている。素朴に嬉(うれ)しい。地味だけど、背筋のシャンと伸びた作家たちの小説がまた読める。山川方夫もそんな作家の一人。雑誌「三田文学」では編集長を務め、江藤淳に『夏目漱石論』を書かせた存在として記憶されるが、彼の残した小説は全集でこそ読めるものの、手軽には手に入らない。『愛のごとく』や『日々の死』がまた読みたい。そんな人は少なくないと思う。
そんな人に朗報。山川が残したエッセイから厳選した数篇(へん)で編まれた本がこれ。小説ではないが、山川の口調が堪能できる。
とにかく、切れ味が鋭い。作家論も映画論も東京論も、どれも素晴らしい。
石原慎太郎の『太陽の季節』が表象する「若さ」があまりに単純で、作家の「皮膚」にすぎないと断じたり、当時大人気だった映画監督ミケランジェロ・アントニオーニに啖呵を切ったり……。
職人的に構築された小説世界とは、またひとあじ違った文章の世界に触れることで、山川方夫の奥行きを実感した。好企画の一冊。
【単行本】
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