書評

銀河英雄伝説 1 黎明編 (東京創元社)

  • 2017/08/07
銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫) / 田中 芳樹
銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)
  • 著者:田中 芳樹
  • 出版社:東京創元社
  • 装丁:文庫(384ページ)
  • 発売日:2007-02-21
  • ISBN:4488725015

※書店によっては、在庫の無い場合や取り扱いの無い場合があります。あらかじめご了承ください。
※詳しい購入方法は、各ネット書店のサイトにてご確認ください。

宇宙版三国志の興奮

日本の宇宙戦争SF(またはミリタリー・スペースオペラ)と言えば、いちばんの大物は田中芳樹『銀河英雄伝説』(以下『銀英伝』)。1982年から89年にかけて、トクマ・ノベルズから正伝10巻と外伝4巻を刊行。いまは創元SF文庫に入ってますが、全バージョンを合計した累計発行部数はなんと1500万部以上。“日本SF最大の”とか“スペースオペラ史上最高の”とかの枠をはるかに超え、日本語で書かれたエンターテインメント小説としては最大級の(もしかしたら史上最大の)成功をおさめている。

古典的なスペースオペラ(たとえばハミルトンの《キャプテン・フューチャー》シリーズとか)は、宇宙版チャンバラ時代劇ノリだが、『銀河英雄伝説』の語り口はむしろ歴史小説に近い。

時は西暦35世紀末。銀河系に広がった人類は、専制政治を敷く銀河帝国と、民主共和制を奉じる自由惑星同盟、商業を中心とするフェザーン自治領の三大勢力に分かれ、帝国と同盟の間では長く戦争状態が続いている。そんなとき、2人の天才が彗星(すいせい)の如く出現する。かたや、驚異的な速度で昇進し、帝国元帥の座についた天才、ラインハルト・フォン・ローエングラム。かたや、軍隊を嫌いながらも天賦の軍事的才能によって武勲を重ね、同盟の提督に抜擢(ばってき)された「不敗の名将」「奇跡のヤン」ことヤン・ウェンリー。

『三国志』になぞらえると、帝国が魏、同盟が蜀、自治領が呉、ラインハルトが曹操でヤン・ウェンリーは劉備+孔明の役どころか。東洋的な歴史観に裏うちされた戦いの構図が、善悪二元論を軸とするアメリカ型スペースオペラと決定的に違う、『銀英伝』の特徴になる。

中国大陸でも“太空版三國”(宇宙版三国志)と呼ばれて大人気を博しているというだけあって、大勢の個性的な登場人物たちの魅力も、緻密な戦略戦術の面白さも、『三国志』にひけをとらない。いままで宇宙SFなんか1冊も読んだことがないんだけど……という人でも、歴史小説好きならきっとハマれるはず。まだ『銀英伝』を知らない人は、夏休みの一気読みにぜひ。

初出メディア

西日本新聞

西日本新聞 2015年8月3日

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銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫) / 田中 芳樹
銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)
  • 著者:田中 芳樹
  • 出版社:東京創元社
  • 装丁:文庫(384ページ)
  • 発売日:2007-02-21
  • ISBN:4488725015

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