コラム

辻原登「2017この3冊」毎日新聞|『リリース』古谷田奈月『僕が殺した人と僕を殺した人』東山彰良『ナボコフ・コレクション』ウラジミール・ナボコフ

  • 2018/01/03

2017 この3冊

〈1〉『リリース』古谷田奈月著(光文社・1728円)

〈2〉『僕が殺した人と僕を殺した人』東山彰良著(文藝春秋・1728円)

〈3〉『ナボコフ・コレクション マーシェンカ/キング、クイーン、ジャック』ウラジミール・ナボコフ著(新潮社・4968円)


〈1〉奇想綺譚(きたん)ではあるが、ジェンダーフリーの近未来ファシズム国家をめぐる政治的、思想的闘争に絡めて若者の愛の世界を描こうとする作者の意図は明確で、遥(はるか)か遠く『悪霊』の世界のピリピリした空気が

〈2〉戦後日本文学は久しぶりに本物の青春小説を獲得した。角を曲るごとに、新しい、意外な風景が展開する。めくるめくドンデン返し。台湾の過去と現在、アメリカ、そして世界で「日本語」という現在が、少年たちの世界で炸裂(さくれつ)する。エドワード・ヤンの傑作映画「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」に拮抗する。

〈3〉ロシア語原典からの初訳。昔、英語版からの翻訳で読んだ。魅力は変わらない。エピグラフに「……渦ぎし日の恋を思い 渦ぎし愛を思う…」(プーシキン)がある。

今年は、読むと危険な青春小説三冊が揃った。

リリース / 古谷田 奈月
リリース
  • 著者:古谷田 奈月
  • 出版社:光文社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(316ページ)
  • 発売日:2016-10-18
  • ISBN:4334911285
内容紹介:
女性首相ミタ・ジョズの活躍の下、同性婚が合法化され、男女同権が実現した“オーセル国”。精子バンクが国営化され、人々はもう性の役割を押し付けられることはなく、子供をもつ自由を手に入れていた。ある日、国家のシンボルとも言うべき“オーセル・スパームバンク”を一人の異性愛者で愛国主義者、タ… もっと読む
女性首相ミタ・ジョズの活躍の下、同性婚が合法化され、男女同権が実現した“オーセル国”。精子バンクが国営化され、人々はもう性の役割を押し付けられることはなく、子供をもつ自由を手に入れていた。ある日、国家のシンボルとも言うべき“オーセル・スパームバンク”を一人の異性愛者で愛国主義者、タキナミ・ボナが占拠した。彼は、バンクへのスパーム提供を拒み続けている名門大学の男子学生である。「今こそはっきり告発します。ミタ・ジョズはぼくをレイプした。(中略)ぼくの盗まれたスパームのIDは…」彼の衝撃の演説は、突如現れたもう一人の男性テロリスト、オリオノ・エンダがボナを射殺することで幕を閉じた―その場に居合わせた17歳のユキサダ・ビイは、ボナの持つ“言葉の力”に魅了され、新進の無思想ニュースメディア『クエスティ』の記者になり、二人のテロリストの実像を追い求める―男女の在り方を問う、新時代のディストピア小説。

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僕が殺した人と僕を殺した人 / 東山 彰良
僕が殺した人と僕を殺した人
  • 著者:東山 彰良
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(335ページ)
  • 発売日:2017-05-11
  • ISBN:4163906436
内容紹介:
一九八四年、台湾で四人の少年たちは友情を育んでいた。三十年後、そのうち一人が全米を震撼させる殺人鬼に。超弩級の青春ミステリ。

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ナボコフ・コレクション マーシェンカ/キング、クイーン、ジャック / ウラジーミル・ナボコフ
ナボコフ・コレクション マーシェンカ/キング、クイーン、ジャック
  • 著者:ウラジーミル・ナボコフ
  • 翻訳:奈倉 有里, 諌早 勇一
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(459ページ)
  • 発売日:2017-10-31
  • ISBN:4105056069
内容紹介:
言葉の魔術師ナボコフの、ロシア語からの新訳を中心とした初のコレクション第1弾。初恋と密通を描いたベルリン時代の2作品を収録。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2017年12月17日

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