コラム

養老 孟司「2018 この3冊」|鈴木大介『脳は回復する』(新潮社)、新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)、南直哉『超越と実存』(新潮社)

  • 2019/01/14

2018 この3冊

(1)『脳は回復する 高次脳機能障害からの脱出』鈴木大介著(新潮新書)

(2)『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子著(東洋経済新報社)

(3)『超越と実存 「無常」をめぐる仏教史』南直哉著(新潮社)



(1)は闘病記として出色。なにより気が滅入(めい)らないし、表現がじつに上手だから、医師にも介護者にも大いに参考になる。自分は頭が普通だと思っている人も、読んだ方がいいと思う。

(2)は教育関係者必読。日本社会の実情をきちんと報告する本はじつは少ない。あっても嫌われる。この本はデータが明瞭だから嫌いようもない。実際に教育がそうなっているんだから仕方がない。この本での調査結果の先に、本質的に重要な問題がある。だから、まずこの本を読んでもらわないことには、まさに話にならない。

(3)は立派な哲学書であり、仏教思想の入門書でもある。少し読みにくいけれど、時間をかけて読んだらいいと思う。そうすればべつに難しいことは書いてないとわかるはずである。現代人はつくづく無明の闇に沈んでいると思いますなあ。

脳は回復する  高次脳機能障害からの脱出 / 鈴木 大介
脳は回復する 高次脳機能障害からの脱出
  • 著者:鈴木 大介
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:新書(272ページ)
  • 発売日:2018-02-15
  • ISBN-10:4106107546
  • ISBN-13:978-4106107542
内容紹介:
41歳で脳梗塞になった後、僕は僕じゃなくなった!? リハビリ後の困難と克服を描いた最新刊。

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AI vs. 教科書が読めない子どもたち / 新井 紀子
AI vs. 教科書が読めない子どもたち
  • 著者:新井 紀子
  • 出版社:東洋経済新報社
  • 装丁:単行本(287ページ)
  • 発売日:2018-02-02
  • ISBN-10:4492762396
  • ISBN-13:978-4492762394
内容紹介:
AIの誤解・限界を示す一方で、日本人の読解力の低下を指摘。AI化が進んだ未来の行き着く先は、教育の劣化を伴った最悪の恐慌だ。

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超越と実存 「無常」をめぐる仏教史 / 南直哉
超越と実存 「無常」をめぐる仏教史
  • 著者:南直哉
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(256ページ)
  • 発売日:2018-01-26
  • ISBN-10:4103021322
  • ISBN-13:978-4103021322
内容紹介:
仏教とは「超越と実存」のせめぎ合いの歴史である――「恐山の禅僧」が、ブッダから道元までの思想的変遷に迫る、かつてない仏教史。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2018年12月16日

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