読書日記

世界が分断されているいまこそ読むべき本―ルネ・デカルト『方法序説』、ブレーズ・パスカル『パンセ』など

  • 2020/06/20
私はフランス文学者を肩書にしているので、最もフランス的特徴のよく出た本を選んでみた。フランス的特徴とは何か? フランス思想やフランス文学・芸術を貫く特徴を一言で要約すれば、「普遍的たらんとする意思」ということになるだろう。人類は、人種、民族、言語、体制など様々なかたちに分かれているが、それらの個別性は思想や文学が究極の目的とすべきことではないと、フランス人は考えるのだ。むしろ、ホモ・サピエンスとしての人類に普遍的なものは何かと追究することこそが思想、文学、芸術の本質なのだ。フランス的特徴を最もクリアに表したのが、ルイ14世の時代のモラリストと呼ばれる文学者たちだ。デカルト、パスカル、ラ・ロシュフコー、ラ・フォンテーヌらは、フランス人についてではなく、あくまで人間一般について考えを巡らそうとした。その結果、どれほど時間と空間を隔てていようと、いかなるときにどんな場所で読んでも、「これは私のことだ」と深く納得できる思想書や文学書、芸術作品が出来上がったのである。現在、コロナ危機によって世界が分断され、多くの人々が個別性にしか生きられないと感じている。この10冊は、こうした瞬間にこそ読むべき普遍性志向の本である。


世界が分断されているいまこそ読むべき本

ルネ・デカルト『方法序説』

方法序説  / デカルト
方法序説
  • 著者:デカルト
  • 翻訳:谷川 多佳子
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:文庫(137ページ)
  • 発売日:1997-07-16
  • ISBN-10:4003361318
  • ISBN-13:978-4003361313
内容紹介:
すべての人が真理を見いだすための方法を求めて、思索を重ねたデカルト(1596‐1650)。「われ思う、ゆえにわれあり」は、その彼がいっさいの外的権威を否定して到達した、思想の独立宣言である。近代精神の確立を告げ、今日の学問の基本的な準拠枠をなす新しい哲学の根本原理と方法が、ここに示される。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

世の中はなぜうまくいっていないのか? それは、人が考えるための能力(理性)を与えられながら「正しく考える方法」を教えられていないからだ。こう考えたデカルトが書き上げた「正しく考えるための方法」のイントロダクション。

 

ブレーズ・パスカル『パンセ』

パンセ / パスカル
パンセ
  • 著者:パスカル
  • 翻訳:塩川 徹也
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:文庫(480ページ)
  • 発売日:2015-08-18
  • ISBN-10:4003361423
  • ISBN-13:978-4003361429
内容紹介:
「人間は一本の葦にすぎない。自然のうちで最もか弱いもの、しかしそれは考える葦だ」綺羅星のようなフレーズがちりばめられたパスカル(1623―1662)の『パンセ』。早世した天才が書き残した草稿から成る遺稿集、モラリスト文学、キリスト教護教論……。謎に満ちた〈テクスト〉のありうべき姿を提示することを期した日本語版。(全3冊)

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人間はどんな仕事にも向いている。向いていないのは、なんの気晴らしもなく部屋にじっと閉じこもっていることだけだ──新型コロナウイルス感染拡大により、人類全体が蟄居を強制されているいまこそ読むべき本。


フランソワ・ド・ラ・ロシュフコー『箴言集』

箴言集 / ラ・ロシュフコー
箴言集
  • 著者:ラ・ロシュフコー
  • 翻訳:武藤 剛史
  • 出版社:講談社
  • 装丁:文庫(264ページ)
  • 発売日:2019-07-12
  • ISBN-10:4065165938
  • ISBN-13:978-4065165935
内容紹介:
鋭敏な人間洞察と強靱な精神、ユーモアに満ちた短文が、近代人の本性を抉り出す。自然に読める新訳だから、現代人の心に刺さる。

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人間の最も根源的な欲動は「褒めてくれ!」という自己愛にほかならない。それは、性欲よりも食欲よりも強く、時には無私無欲を装うこともある。私の「ドーダ理論(ドーダ、すごいだろう!)」の基礎となった箴言集。

 

エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ『自発的隷従論』

自発的隷従論 / エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ
自発的隷従論
  • 著者:エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ
  • 翻訳:山上 浩嗣
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:文庫(256ページ)
  • 発売日:2013-11-08
  • ISBN-10:4480094253
  • ISBN-13:978-4480094254
内容紹介:
圧制は、支配される側の自発的な隷従によって永続する――支配・被支配構造の本質を喝破した古典的名著。20世紀の代表的な関連論考を併録。

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若くして逝ったモンテーニュの親友の遺作。人はなぜ暴君に自発的に隷従するのかという根源的問いを発し、それは人間が長いあいだに隷従する習慣を身につけ、隷従を自然状態だと感じるようになったからだとする。これまた、いま読まれるべき本。

 

エティエンヌ・ボノ・ド・コンディヤック『論理学 考える技術の初歩』

論理学 考える技術の初歩  / エティエンヌ・ボノ・ド・コンディヤック
論理学 考える技術の初歩
  • 著者:エティエンヌ・ボノ・ド・コンディヤック
  • 翻訳:山口 裕之
  • 出版社:講談社
  • 装丁:文庫(240ページ)
  • 発売日:2016-07-12
  • ISBN-10:4062923696
  • ISBN-13:978-4062923699
内容紹介:
「啓蒙」の18世紀フランスを代表する思想家が最晩年に残した著作、ついに本邦初訳! 「正しく考える方法」を学ぶための最良の書。

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デカルトの『方法序説』に異を唱えるコンディヤックによる独自の『方法序説』。意識的にできることは無意識的にできていることにほかならないから、無意識的にできていることを分析して意識化する以外にはないというのがその主張。

 

ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ『寓話』

ラ・フォンテーヌ寓話 / ラ・フォンテーヌ
ラ・フォンテーヌ寓話
  • 著者:ラ・フォンテーヌ
  • 翻訳:大澤 千加
  • 出版社:ロクリン社
  • 装丁:単行本(204ページ)
  • 発売日:2016-04-11
  • ISBN-10:4907542259
  • ISBN-13:978-4907542252
内容紹介:
フランス人なら誰しもが知る、強かに生きるための知恵17世紀のフランスの詩人ラ・フォンテーヌは、皇帝ルイ14世の王太子に「人生の教訓を学んでもらいたい」との思いで、動物たちを主人公に… もっと読む
フランス人なら誰しもが知る、強かに生きるための知恵

17世紀のフランスの詩人ラ・フォンテーヌは、皇帝ルイ14世の王太子に「人生の教訓を学んでもらいたい」との思いで、動物たちを主人公にしたこの寓話集を著しました。人生が変わる、ちょっとスパイシーな全26話。

19世紀に描かれた、格調高いモンヴェルの挿絵をそのまま掲載。ユーモラスで可愛らしく、生き生きとした動物たちが、この寓話の魅力を一層引き立ててくれています。プレゼントにも人気の、美しい装丁の一冊です。

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「すべての道はローマに通ずる」など格言のもと。イソップ寓話をもとにフランス的な毒とエスプリを盛り込んだ寓話集。


アレクシ・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』

アメリカのデモクラシー〈第1巻〉 / トクヴィル
アメリカのデモクラシー〈第1巻〉
  • 著者:トクヴィル
  • 翻訳:松本 礼二
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:文庫(480ページ)
  • 発売日:2005-12-16
  • ISBN-10:4003400933
  • ISBN-13:978-4003400937
内容紹介:
本巻に収めた第二部では、大国となりつつある米国で、デモクラシーが前例のない大規模に機能するには何が問題となるかを検証、後世の米ソ対立を予言する文章で締めくくる。「いつの日か世界の半分の運命を手中に収めることになるように思われる」。

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利己心の塊アメリカ人社会がなぜ自己崩壊せずに機能するのか、謎を解き明かす名著。正しく考えられた自己利益の追求が原理だ。

 

マルセル・モース『贈与論』

贈与論 他二篇 / マルセル・モース
贈与論 他二篇
  • 著者:マルセル・モース
  • 翻訳:森山 工
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:文庫(496ページ)
  • 発売日:2014-07-17
  • ISBN-10:4003422813
  • ISBN-13:978-4003422816
内容紹介:
贈与や交換は、社会の中でどのような意味を担っているのか?モース(1872‐1950)は、ポリネシア、メラネシア、北米から古代のローマ、ヒンドゥー世界等、古今東西の贈与体系を比較し、すべてを贈与し蕩尽する「ポトラッチ」など、その全体的社会的性格に迫る。「トラキア人における古代的な契約形態」「ギフト、ギフト」の二篇と、詳しい注を付す。

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物々交換ではなく、一方的に先に与える「贈与」こそが交換様式の始まりであるとした伝説的な人類学の古典。

 

マルク・ブロック『比較史の方法』

比較史の方法 / マルク・ブロック
比較史の方法
  • 著者:マルク・ブロック
  • 翻訳:高橋 清徳
  • 出版社:講談社
  • 装丁:文庫(136ページ)
  • 発売日:2017-07-11
  • ISBN-10:4062924374
  • ISBN-13:978-4062924375
内容紹介:
「アナール派」の創始者マルク・ブロック(1886-1944年)が残した最良の歴史入門。なぜ人は歴史を知ろうとするのか?

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歴史を科学に近づけるには条件のよく似た2つの歴史を比較する「実験の史学」しかないとするアナール史学の創始者の講演。

 

ロラン・バルト『ロラン・バルト モード論集』

ロラン・バルト モード論集 / ロラン バルト
ロラン・バルト モード論集
  • 著者:ロラン バルト
  • 翻訳:山田 登世子
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:文庫(184ページ)
  • 発売日:2011-11-09
  • ISBN-10:4480094105
  • ISBN-13:978-4480094100
内容紹介:
初期の金字塔『モードの体系』当時のロラン・バルトは、ソシュールによって提唱された記号論的方法を探り、モードをその研究対象として、多くのエッセイを残している。モード界の2人のヒーロー… もっと読む
初期の金字塔『モードの体系』当時のロラン・バルトは、ソシュールによって提唱された記号論的方法を探り、モードをその研究対象として、多くのエッセイを残している。モード界の2人のヒーローを対決させる「シャネルvsクレージュ」、装いの卓越性について語る「ダンディズムとモード」、衣服史研究の方法論をめぐる「衣服の歴史と社会学」、モード誌の表現からその意味作用を探る「今年はブルーが流行」など13本を収める。緻密かつ鮮やかにモードという日常の現象を分析してみせる1冊。新訳・オリジナル編集。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

モードは思想であり、思想であればその言語は解読可能だとするバルトの「モードの体系」のアンソロジー。シャネル論が秀逸。

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