コラム
藤田 省三『戦後精神の経験 2』(みすず書房)、エドワード・ファウラー著、川島 めぐみ訳『山谷ブルース』(洋泉社)、結城 登美雄『山に暮らす 海に生きる』(無明舎出版)
書評委員が選んだ今年(1998年)の3点
(1)藤田 省三『戦後精神の経験 2』(みすず書房)
不況を嘆き景気対策をのみ求めるのは、その原因であるバブル経済――地上げ、住民追い出し、乱開発を忘れ免罪するものである。それを許す心性を育てた高度成長。礼賛本多い中で「高度成長」を批判的に考え、自分の育った時代を検証するのに役立った。諧謔(かいぎゃく)、皮肉、精神の活気溢(あふ)れる書評やコラムも、たまに取り出してかじりたい。(2)エドワード・ファウラー著、川島 めぐみ訳『山谷ブルース』(洋泉社)
高度成長の土木工事を支えた日雇い労働者が生きる「山谷」。ドヤに住み一緒に働いたアメリカ人が、克明な描写と聞き取りで、多様性と「自由」がある町、職場としての山谷を浮かび上がらす。男社会山谷を評した訳者後書きもいい。(3)結城 登美雄『山に暮らす 海に生きる』(無明舎出版)
「あんちゃん、気楽でいいな」といわれながら五十すぎの男が東北をうろついた記録。昆布からコケムシを洗い、木に登り漆をかく。それでナンボになるか。労働の手続きと経済がきちんととらえられ出色。ALL REVIEWSをフォローする

































