書評
鹿島 茂「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>佐藤 彰一『フランス中世史Ⅰ―カペー朝の革新』(名古屋大学出版会) <2>佐川 美加『凸凹で読みとくパリ―水に翻弄されてきた街の舞台裏』(学芸出版社) <3>四方田 犬彦『三島由紀夫を見つめて』(ホーム社)
2025年「この3冊」
<1>佐藤 彰一『フランス中世史Ⅰ―カペー朝の革新』(名古屋大学出版会)
<2>佐川 美加『凸凹で読みとくパリ―水に翻弄されてきた街の舞台裏』(学芸出版社)
<3>四方田 犬彦『三島由紀夫を見つめて』(ホーム社)
<1>は『フランク史』を刊行したフランス史の泰斗による待望のフランス中世通史。小さな王国がいかにして今日まで続く大国へと変貌していったか、その足跡を「王の歴史」を厭(いと)わずに、アナール史学の成果もとりいれながら総合的に記述していく。
<2>は、セーヌの流れの自然的・人為的変化がパリの歴史をかたちづくっていったかを水文学的観点から考察した驚くべき一冊。こんなにユニークかつ説得的な研究はフランスにもない!
<3>は三島由紀夫関連のエッセイや研究を集めて一巻としたものだが、三島由紀夫の自刃の目的は「彼を知るすべての者に死を贈り届けることであった」という結論は決定的である。三島由紀夫とパゾリーニの架空対談は対比列伝の傑作。
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