書評

『国を蹴った男』(講談社)

  • 2017/07/01
国を蹴った男 / 伊東 潤
国を蹴った男
  • 著者:伊東 潤
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(306ページ)
  • 発売日:2012-10-26
  • ISBN:4062179911
内容紹介:
武田信玄、上杉謙信、織田信長、豊臣秀吉-天下に手を伸ばした英雄たちの下、男たちはそれぞれの正念場を迎える。戦国小説集。

敗者に焦点、力強い歴史短編集

時代小説の中でも、ある程度読者を選ぶ戦国ものの分野に、果敢に挑戦するのが本書の著者、伊東潤だ。すでに一度、『城を噛(か)ませた男』で直木賞の候補にもなり、その筆力はつとに認められている。

本書は、群雄割拠する戦国時代を舞台に、勝者よりもむしろ敗者に焦点を当てて、その生きざまと死にざまを描いた、力強い作品集だ。羽柴秀吉、武田信玄、石田三成などなじみの人物も登場するが、彼らはおおむね引き立て役にとどまる。彼らと関わりを持つ、あまり人に知られていない武将や武士、茶人らが主役を務める。長束正家、佐久間盛政などはまだしも、五味与惣兵衛や那波無理之介となると、たとえ実在しているにせよ、かなり怪しげな人物だ。そうした日陰の人びとに、新しい息吹を与えた著者の着想は、評価されてよい。表題作に出てくる、鞠(まり)くくりの五助は創作だろうが、鞠を蹴る今川氏真は実在の人物で、その人物造形は本編中の白眉(はくび)、といえよう。
国を蹴った男 / 伊東 潤
国を蹴った男
  • 著者:伊東 潤
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(306ページ)
  • 発売日:2012-10-26
  • ISBN:4062179911
内容紹介:
武田信玄、上杉謙信、織田信長、豊臣秀吉-天下に手を伸ばした英雄たちの下、男たちはそれぞれの正念場を迎える。戦国小説集。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2013年1月6日

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