遠出のおともに
子どもを連れて遠出するとき、バッグには必ず二種類の絵本を入れてゆく。一つは、日ごろ慣れ親しんでいる絵本。夜、いつもと違った環境で寝るときなどには、これがあると安心できるようだ。
そしてもう一つは、初めての絵本。レストランや乗り物のなかで、ぐずったり、騒(さわ)いだりしたときに、「これは何かな~?」と気をひくときに登場させる。
前者は決まったものだから迷うこともないが、後者を選ぶのは、けっこう大変だ。気に入るか、気に入らないか、事前に試してみることができない(やはり「初めて見る」というところが肝心なので)。
じっくりストーリーを追うものよりも、多少しかけのあるタイプのほうが、即効性があるようだ。これまでに、うまくいった例をいくつかあげてみると……。
『メイシーちゃん おたのしみひろばへゆきます』(ルーシー・カズンズ作、五味太郎訳、借成社・一四七〇円)。ページごとに公園の場面が現れて、矢印をひっぱると、ブランコが揺れたり池のアヒルが姿を見せたりする。日ごろ、『メイシーちゃんのおうち』(ルーシー・カズンズ作、五味太郎訳、借成社・一九九五円・絶版)という組み立て絵本で、よく遊んでいたので、息子はとても喜んだ。お気に入りの絵本がシリーズで出ている場合、その中の新しい一冊を選ぶのも、いい方法だと思う。キャラクターに親しみがあると、子どもが入っていきやすい。
『アンパンマンとシールであそぼう! たべものいっぱい』(やなせたかし原作、東京ムービー作画、フレーベル館・七一四円)は、ピクニックやレストランの場面で、食べ物のシールを貼っていくのが、楽しい。子どもって、ほんとうにシールが大好きな時期があるので、そういう時にはもってこいの本だ。
そして、私がおすすめする「遠出のおとも」ベストワンは『じぶんでひらく絵本』という四冊セットのしかけ絵本だ。
たとえば一冊目の『おかあさんとこども』は、すべての右ページに動物のおかあさんが描かれていて、折り返しを開くと、子どもが現れる。単純な仕組みなのだけど、折り返しを開いたときの絵のつながり具合が、素晴らしい。左ページには語りかけの言葉があるのだが、それを聞くのももどかしいという感じで、息子は夢中になってめくっていた。自分でめくれるのが楽しいし、絵の変化が本当に素敵で味わい深いのだ。
他の三冊も、それぞれにこのシンプルなしかけが、最大限に生かされた絵づくりになっている。
もちろんこれらは、遠出しない人にもおすすめで、息子も長いあいだ愛読していた、が、初めて見せてやるなら、遠出の切り札に、と私がしつこく思う理由は、もう一つ。このシリーズは、とてもコンパクトで軽い! 荷物の多い子連れには、まことにありがたい絵本なのです。
連休に乗る新幹線 子を持てば典型を
生きることの増えゆく
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