書評

『ジュゴンの帰る海』(ハモニカブックス)

  • 2024/12/12
ジュゴンの帰る海 / 浦島 悦子,なかち しずか
ジュゴンの帰る海
  • 著者:浦島 悦子,なかち しずか
  • 出版社:ハモニカブックス
  • 装丁:単行本(40ページ)
  • 発売日:2021-07-16
  • ISBN-10:4907349203
  • ISBN-13:978-4907349202
内容紹介:
かつて琉球諸島沿岸に普通に生息していたジュゴンは、長い歴史を通じて物心両面あわせて人間にかかわりの深い生き物だった。本年7月に奄美、徳之島、沖縄島北部等はその希少な自然遺産を認め… もっと読む
かつて琉球諸島沿岸に普通に生息していたジュゴンは、長い歴史を通じて物心両面あわせて人間にかかわりの深い生き物だった。
本年7月に奄美、徳之島、沖縄島北部等はその希少な自然遺産を認められ、世界遺産への登録となったが、一方で、ジュゴンは人間たちの活動によって追いつめられ、絶滅の危機に瀕している。
この絵本の主人公・少女マカトとジュゴンとの物語は、人間の起こした戦争に翻弄される「沖縄」の歴史とともに描かれてゆく。
辺野古の海を臨む名護市在住の作者コンビが届けてくれる、命についてのメッセージ。

装丁=コヅカクミコ
「ザン(ジュゴン)は神さまのおつかいだよ。大切に仲よくすれば、私たちを守ってくれる」。沖縄生まれの女の子マカトにおばぁが教えてくれます。両親はパラオに出稼ぎに行き、マカトは漁師のおじぃとおばぁに育てられているのです。おじぃの舟から親子のザンを見て羨ましく思いながら。そのうち戦争が始まり、父さんは兵隊に行き、母さんの乗った船は沈められます。アメリカ軍が上陸し、山にこもった人々が次々と死にます。海に落とされた爆弾でザンも死にます。でもマカトは夜の海で、大きくなった子どものザンに出会えたのです。

敗戦後、村人たちは助け合って暮らしを取りもどし、マカトも結婚します。戦争は終わったけれど、村の海を埋め立てて米軍基地がつくられています。ザンの絶滅を心配しているところへ、あのザンが姿を見せます。「ザンは神さまのおつかいだよ。大切に仲よくすれば、私たちを守ってくれる」。おばぁになったマカトが孫たちにこう語るのです。

サンゴ礁にジュゴンが泳ぐ海は私たちを守る存在なのに、なぜまたもそれを壊すのか。夏休みの子どもと考えたいことです。
ジュゴンの帰る海 / 浦島 悦子,なかち しずか
ジュゴンの帰る海
  • 著者:浦島 悦子,なかち しずか
  • 出版社:ハモニカブックス
  • 装丁:単行本(40ページ)
  • 発売日:2021-07-16
  • ISBN-10:4907349203
  • ISBN-13:978-4907349202
内容紹介:
かつて琉球諸島沿岸に普通に生息していたジュゴンは、長い歴史を通じて物心両面あわせて人間にかかわりの深い生き物だった。本年7月に奄美、徳之島、沖縄島北部等はその希少な自然遺産を認め… もっと読む
かつて琉球諸島沿岸に普通に生息していたジュゴンは、長い歴史を通じて物心両面あわせて人間にかかわりの深い生き物だった。
本年7月に奄美、徳之島、沖縄島北部等はその希少な自然遺産を認められ、世界遺産への登録となったが、一方で、ジュゴンは人間たちの活動によって追いつめられ、絶滅の危機に瀕している。
この絵本の主人公・少女マカトとジュゴンとの物語は、人間の起こした戦争に翻弄される「沖縄」の歴史とともに描かれてゆく。
辺野古の海を臨む名護市在住の作者コンビが届けてくれる、命についてのメッセージ。

装丁=コヅカクミコ

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2021年8月7日

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