「ザン(ジュゴン)は神さまのおつかいだよ。大切に仲よくすれば、私たちを守ってくれる」。沖縄生まれの女の子マカトにおばぁが教えてくれます。両親はパラオに出稼ぎに行き、マカトは漁師のおじぃとおばぁに育てられているのです。おじぃの舟から親子のザンを見て羨ましく思いながら。そのうち戦争が始まり、父さんは兵隊に行き、母さんの乗った船は沈められます。アメリカ軍が上陸し、山にこもった人々が次々と死にます。海に落とされた爆弾でザンも死にます。でもマカトは夜の海で、大きくなった子どものザンに出会えたのです。
敗戦後、村人たちは助け合って暮らしを取りもどし、マカトも結婚します。戦争は終わったけれど、村の海を埋め立てて米軍基地がつくられています。ザンの絶滅を心配しているところへ、あのザンが姿を見せます。「ザンは神さまのおつかいだよ。大切に仲よくすれば、私たちを守ってくれる」。おばぁになったマカトが孫たちにこう語るのです。
サンゴ礁にジュゴンが泳ぐ海は私たちを守る存在なのに、なぜまたもそれを壊すのか。夏休みの子どもと考えたいことです。