「哲学」と「てつがく」のあいだ
- 著者:鷲田 清一
- 出版社:みすず書房
- 装丁:単行本(284ページ)
- 発売日:2001-10-26
- ISBN-13:978-4622048121
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ライオンは『てつがく』が気に入っている。かたつむりが、ライオンというのは獣の王で哲学的な様子をしているものだと教えてくれたからだ。きょうライオンは『てつがくてき』になろうと思った……
「やあ、かたつむり。ぼくはきょう、てつがくだった」
「やあ、ライオン。それはよかった。で、どんなだった?」
「うん、こんなだった」
ライオンは、てつがくをやった時のようすをしてみせた。さっきと同じように首をのばして右斜め上をみると、そこには夕焼けの空があった。
「ああ、なんていいのだろう。ライオン、あんたの哲学は、とても美しくてとても立派」
「そう? …とても…何だって? もういちど言ってくれない?」
「うん。とても美しくて、とても立派」
「そう、ぼくのてつがくは、とても美しくてとても立派なの? ありがとうかたつむり」
ライオンは肩こりもお腹すきも忘れて、じっとてつがくになっていた。