書評

『終末のオルガノン』(作品社)

  • 2018/01/01
終末のオルガノン / 高山 宏
終末のオルガノン
  • 著者:高山 宏
  • 出版社:作品社
  • 装丁:単行本(332ページ)
  • 発売日:1994-08-00
  • ISBN:487893199X
内容紹介:
すべての「蒙」きを「啓」こうとする近代知の妄執から逃れ、関係の網目へと解体された世界の四肢をもう一度呼び戻す終末のオルガノン〔詩的方法〕。
高山宏ほどパラディグマティック(範列的)な書き手はいない。それは扱う対象ばかりでなく、その文体、思考法においてもパラディグマティックだということである。たとえば彼は「板」と書いて横に「ボード」とルビを振るが、これは別に気取りではなく、「板」と書くと自動的に「ボード/テーブル/タブロー」という範列が横並び的に現れてくるからである。そして、「板」という単語がひとたび現れると、それはパラディグマティックな運動を開始して、「食卓、仕事台」などの系列を引き出し、そこから「部屋、家族」などを手繰り寄せる。また「タブレット」の系列では「木版、法典」を、「タブロー」の方で「絵」を、あるいは、重要な系列「図表、目次」などを次々に導きだす。こうして意味が意味を呼び、気がつくと「テーブル」に発する「近代」という「秩序化の身振り」が一望のもとに示される。

これは、序章の『「構造」はテーブルする』というマニフェストの要約だが、こうした文体と思考法におけるパラディグマティックな増殖と収斂の構造は、ダン、メルヴィル、デフォーなどの重層的作家を、「橋・数・螺旋・気象」などの多元決定的なテーマから考察した各章においても遺憾なく発揮されている。

本書は、高山宏を読むときは、「起」から「結」へと至る「線的」な読書ではなく「まるで絵でも見るときのように無方向的に拡散」した読み方をしなければならないことを「構造的」に教えてくれる貴重な一冊である。

【この書評が収録されている書籍】
歴史の風 書物の帆  / 鹿島 茂
歴史の風 書物の帆
  • 著者:鹿島 茂
  • 出版社:小学館
  • 装丁:文庫(368ページ)
  • 発売日:2009-06-05
  • ISBN:4094084010
内容紹介:
作家、仏文学者、大学教授と多彩な顔を持ち、稀代の古書コレクターとしても名高い著者による、「読むこと」への愛に満ちた書評集。全七章は「好奇心全開、文化史の競演」「至福の瞬間、伝記・自伝・旅行記」「パリのアウラ」他、各ジャンルごとに構成され、専門分野であるフランス関連書籍はもとより、歴史、哲学、文化など、多岐にわたる分野を自在に横断、読書の美味を味わい尽くす。圧倒的な知の埋蔵量を感じさせながらも、ユーモアあふれる達意の文章で綴られた読書人待望の一冊。文庫版特別企画として巻末にインタビュー「おたくの穴」を収録した。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

終末のオルガノン / 高山 宏
終末のオルガノン
  • 著者:高山 宏
  • 出版社:作品社
  • 装丁:単行本(332ページ)
  • 発売日:1994-08-00
  • ISBN:487893199X
内容紹介:
すべての「蒙」きを「啓」こうとする近代知の妄執から逃れ、関係の網目へと解体された世界の四肢をもう一度呼び戻す終末のオルガノン〔詩的方法〕。

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初出メディア

すばる

すばる 1994年11月

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