前書き
『米光一成ブックレビュー Vol.1』(インプレスR&D)
はじめに
『本の雑誌』(本の雑誌社)に「新刊めったくたガイド」というコーナーがある。米光一成が、二〇〇五年、二〇〇六の二年間、毎月その「新刊めったくたガイド」に書いた原稿を集めて電書化したのが、この「米光一成ブックレビュー Vo1・1」「米光一成ブックレビュー Vol・2」だ。
雑誌に載ったテキストと微妙に違うのは、ぼくの手元にあるテキストをベースにしたからだ。つまり、校正とか、後で修正した部分が反映されていない。
雑誌連載なので行数ぴったり合わせなくてはならないので泣く泣く削った部分も削ってない状態になっている。
とはいえ、細部を除いては雑誌掲載のものと、ほぼ同一のはず。
「新刊めったくたガイド」というのは、『本の雑誌』の中心となるコーナーのひとつ(だよね?)で毎月六人ほどの各ジャンル担当のレビュアーが、新刊をセレクトして紹介するコーナーだ。
米光の担当は、小説以外の本。
小説以外! なんて大雑把なくくりだろう。
ほぼ毎日、書店に行くのはもとからの趣味みたいなところがあったけど、「これも仕事である」という言い訳ができるようになると、書店滞在時間も長時間化して、池袋のジュンク堂に朝行って夜帰ったりしながら、本をあれこれ物色した。
ひたすら新刊を読んで、毎月おもしろいものを選んで、紹介するという二年間だった。
紹介した本は二年間で約百七十冊。
読んだ本は、その三倍以上だ。
思い返してみると、それは確実に修行だった。本を紹介する原稿をいまでも書いているのは、このときの修行のおかげだ。思い出深い。
時にくじけそうになるときに、幾度か、励まされたことがある。
たとえば、杉江松恋さんが〝私は感動しました。なにに感動したかというと、米光一成さんが「本の雑誌」五月号に書かれた書評に〟と書いてくれたことで励まされた。
たとえば、編集者のルーさんが「あのガイドのせいで何冊本を買ったと思ってるんですか」と言ってくれたことで励まされた(実際に彼は百七十冊中四〇冊も読んでいるのだ)。その他、いろいろな読者の感想で励まされた。
というより、ぼくが本を紹介して、その本を読んでくれた人が、感想をぼくに話してくれて、そこで話題が盛り上がったことが何度かあって、それが楽しかった。何かを書くことで、人と人が繋がることができる楽しさを実感できたのは、この連載のおかげだ。
「米光一成ブックレビュー Vol・1」は、本の雑誌二〇〇五年編。
ひさしぶりに原稿を読み返してみると、なつかしいというより、まだまだぜんぜん過去になっていない。荒井良二『ぼくとチマチマ』、柳父章『近代日本語の思想』、佐藤幹夫『自閉症裁判』、柳治男『〈学級〉の歴史学』、木村敏『関係としての自己』、いとうせいこう×渡部直己×奥泉光『文芸漫談』、石原千秋『「こころ」大人になれなかった先生』、菊地成孔『CDは株券ではない』など、その後、何度も読み返したり、著者の他の本を読み漁ったりした本もたくさんある。あ、いまこそ読むべき本じゃないかと思えるものも何冊もあった。
(ニコニコしながら)「読みたい本がたくさん増えて困る!」ってことになってもらえると嬉しい。
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