書評

『ワニくんのふしぎなよる』(BL出版)

  • 2020/08/21
ワニくんのふしぎなよる / みやざき ひろかず
ワニくんのふしぎなよる
  • 著者:みやざき ひろかず
  • 出版社:BL出版
  • 装丁:大型本(1ページ)
  • 発売日:2002-08-01
  • ISBN-10:4892385506
  • ISBN-13:978-4892385506
内容紹介:
夜空を見ていたワニくんの目の前に、突然宇宙人が現れた。勝手に家にあがりこみ、くつろぐ宇宙人に、ふりまわされっぱなしのワニくんですが…。ほのぼのと温かいユーモラスな絵本。「ワニくん」シリーズ。

ワニくんのいいところ

子どもの本の主人公になる動物で、一番多いのはクマではないだろうか。あくまで読者としての勘にすぎないが、「さんびきのくま」といった昔話から「クマのプーさん」にいたるまで。クマは古今東西、普遍的な人気者という気がする。息子の本棚をのぞいてみても、すぐに何冊ものクマさんの本を見つけることができる。

誕生のお祝いにいただいたぬいぐるみ類でも、クマが圧倒的に多かった。犬や猫に比べて、日常的には接する機会の少ない動物だ。逆に、だからこそ、物語や夢をたくしやすいのかもしれない。

さて、今回の主役は、実はクマではなくワニである。読んでやった本の量は、クマのほうが多いと思うのだが、息子はなぜかワニ好きだ。ディズニーのアニメでも、一番好きなのが「フック船長をいつも狙っているワニ」である。

『はらぺこわにときのいいかえる』(ディディエ・レヴィ文、コラリ・ガリブール絵、いしづちひろ訳、BL出版)や、絵本雑誌の付録についていた「めをまわしたアリゲーくん」など、お気に入りのラインナップを見ていて「どうも、この子はワニ好きなのでは?」と思いはじめたころ、それが決定的になった。

『ワニくんのふしぎなよる』に、息子は大喜び。のんびりやで気のいいワニくんとヘンテコな宇宙人との出会いが、ユーモラスに描かれている。おかしくって、ほほえましい話のなかに、心あたたまる要素もあり、そのストーリーが、やわらかな色彩の絵とぴったりだ。

「〇□★」などと書かれている宇宙人の「宇宙言語」が、巻末の解読表で理解できるというオマケも、楽しい。最初は「ホニャラララ」「ピコピコピー」などと適当に読んでいたのだが、実はこれを訳せるとわかって、大人の私のほうが夢中になってしまった。息子も興味津々(しんしん)で「宇宙語、読んで!」と言って本を持ってくることもある。

この一冊がきっかけで、『ワニくんのレインコート』(BL出版)『ワニくんのむかしばなし』(BL出版)など、ワニくんシリーズを次々と手にするようになった。

このワニくんは、まことにおっとりしているので、読んでやるうちに、こちらはカバくんみたいな声になってしまうのだが、でも、これがカバくんじゃあ、ダメなんだろうなあとも思う。もちろんクマくんでも、しっくりこない。

長い顔、大きな足、ごつごつした体……ワニくんの、ややグロテスクなところが、いいのだろう。誰からも愛されるクマくんの風貌とは違う。見た目ちょっと違和感あるけれど、そのワニくんが優しいところや、臆病なところや、おもしろいところを見せてくれるとき、子どもは限りない親近感を抱くようだ。思えばこの要素は、はらぺこわにやアリゲーくんにも共通するところ。ひとひねりした魅力が、ワニの持ち味だ。

【この書評が収録されている書籍】
かーかん、はあい 子どもと本と私 / 俵万智
かーかん、はあい 子どもと本と私
  • 著者:俵万智
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 装丁:文庫(224ページ)
  • 発売日:2012-05-08
  • ISBN-10:4022646667
  • ISBN-13:978-4022646668
内容紹介:
6歳になった今も、息子は絵本を持って母のもとへやってくる――。子育てをする歌人が、子どものために選び、自身も心を揺り動かされた絵本48冊を紹介したエッセイ。母親世代にも懐かしい不朽の名作から、図鑑、ことば遊び、シュールなものまで、幅広く選んでいる。成長に応じた絵本探しの参考として、また母と子のあたたかな交流を描いた本として楽しい一冊。単行本全2巻を1冊にまとめて文庫化。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

ワニくんのふしぎなよる / みやざき ひろかず
ワニくんのふしぎなよる
  • 著者:みやざき ひろかず
  • 出版社:BL出版
  • 装丁:大型本(1ページ)
  • 発売日:2002-08-01
  • ISBN-10:4892385506
  • ISBN-13:978-4892385506
内容紹介:
夜空を見ていたワニくんの目の前に、突然宇宙人が現れた。勝手に家にあがりこみ、くつろぐ宇宙人に、ふりまわされっぱなしのワニくんですが…。ほのぼのと温かいユーモラスな絵本。「ワニくん」シリーズ。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ

初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2007年5月30日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

関連記事
俵 万智の書評/解説/選評
ページトップへ