日本史と外国史の違いは、イメージがわくかどうかにある。徳川家康は狸オヤジを思い出させ、青森にはリンゴが浮かぶ。だが、海外になると具象的な姿や形が出てこない。隣国の中国であっても事情は同じだ。
ところが、本書は中国の歴史について、色彩あふれる絵画や図像をたっぷり用いて簡明に説明する。しかも、ほとんどが見開き2頁に収められているから、分かりやすいことかぎりなし。これなら自国史のごとく一目瞭然と理解できることになる。
唐代の7世紀、李世民は親族を暗殺し、実父を退位させ、太宗として帝位についた。だが、彼は長安を中心とする帝国を平和と繁栄に導き、史上に名高い名君となった。その赤い衣装姿は鮮やかであり、宮廷を訪れる日本人使節の船団も印象深い。
15世紀の明第三代皇帝たる永楽帝も屈指の名君だったが、敬虔な仏教徒でありながら残虐でもあった。黄色い衣装姿は威厳にあふれている。
19世紀末以来、清朝の改革を断行する光緒帝はおばの西太后逝去の前日、謎の死をとげた。その日常着で執務する姿は聡明でさえある。
感覚で理解できる中国史は嬉しいかぎりだ。