書評

『わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』(ダイヤモンド社)

  • 2018/10/26
わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑 / 丸山 貴史
わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑
  • 著者:丸山 貴史
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(192ページ)
  • 発売日:2018-07-19
  • ISBN:9784478104200
内容紹介:
生き物が絶滅する確率は99.9%。聞いてくれ、その理由を!!受難の生き物70種。

絶滅回避方法を学ぶ

生き物自身に事情を語らせるユニークな本である。生物70種の絶滅事例・絶滅回避事例をならべている。自然は偉大な書物であり教師である。本書から絶滅のパターンをみて、「滅びの科学」を考えれば、絶滅回避のテクノロジーが得られる。個人や家族、会社や国も、滅びたい者はいないだろう。児童生徒向けにやさしく書かれた本書は役に立つ。

そもそも、生き物の種は99・9%絶滅する。理由は二つ。地球のせいか、他のライバル生物のせいである。この本では、さらに、生物が絶滅する事情を、油断・やりすぎ・不器用・不運の四つに分けている。不運もある。さほど落ち度がなくても、生物は絶滅する。地球環境の大変化による大絶滅期は何度もあった。何をやっても滅ぶときは滅ぶのである。古生代デボン紀に地上に植物が進出した時は、海にプランクトンが大量発生。海洋生物の8割以上の種が滅んだ。同じくペルム紀末には地球のマグマが大噴出。生物の95%の種が絶滅した。中生代白亜紀には大隕石(いんせき)の衝突で有名な恐竜の絶滅がおきた。

しかし、生物側に打つ手がある場合もあって、ここが学び所である。生物には、やはり「滅びのパターン」がある。第一、すばやく移動・変化できないものは滅びやすい。のろい生物は滅ぶ。そして、食物・住処(すみか)・生殖法を変えるのがのろい者も滅ぶ。モーリシャス島の巨鳥ドードーはのろくて滅んだ。専門に特化するのも生物絶滅史からいえば危険である。史上最大の霊長類も笹しか食べずパンダと競合して絶滅。やりすぎ絶滅というのがある。これしか食べないなどは滅びやすい。狭いニッチな場所だけで生きると、病気で滅びやすい。一方、なんの取り柄(え)もないのに、有袋類のオポッサムのように、何でも食べ、どこでも住み、進化と専門性に背をむけて生きのびた者もいる。アゴ・キバ・ツノなどを大きくし過ぎるのも危険。極端な進化はいけない。オオツノジカも滅びた。未来や危険を察知する情報収集・警戒察知力も大切である。想像力をもった生き物はやはり強い。作戦や計画があるからだ。肉を想うネアンデルタールより神・国・金を想う現生人類が生き残ったのをみればわかる。

こうしてみると、企業経営や人生の乗り切り方にも当てはまる話が多そうである。オウムガイなど、食べ物が少なくて済む低コスト経営な生き物は滅びにくい。もう駄目だと思ったら、水に棲(す)みかを移して逃げ切ったカモノハシ。高山に登ってライチョウのように「縮小均衡」をはかってニッチな市場で生存する例もある。しかし、専門特化する場合は、耐水・耐圧・耐乾燥・耐寒・耐熱など、過酷な環境への適応を覚悟しなければならない。ただ、能力が高いから生き残るかといえば、そうでもなく、戦国武将などもそうだが、なまじ能力が高く、強者と競合してきた生物はしばしば滅んでいる。そもそも強者に当たらない戦略が有効である。

絶滅は悪いことばかりではないと著者は言う。絶滅はイス取りゲームの空席をつくり、新種を生み出す。日本の経済構造は企業の多産多死でなく少産少死。日本人は安定を好み、会社をつぶして新会社をどんどん生むといった新陳代謝をはかることが難しく、国際競争上、成長力は阻害されているかもしれない。絶滅が嫌なら、生き物たちに生存戦略を学んで、永続経営を目指さねばなるまい。孤立した市場、生息地はもうなさそうだ。世界はどんどんこの島国になだれ込んできている。生物に学んではどうだろう。
わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑 / 丸山 貴史
わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑
  • 著者:丸山 貴史
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(192ページ)
  • 発売日:2018-07-19
  • ISBN:9784478104200
内容紹介:
生き物が絶滅する確率は99.9%。聞いてくれ、その理由を!!受難の生き物70種。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2018年10月14日

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