後書き

『ナチス 破壊の経済――1923-1945』(みすず書房)

  • 2019/08/09
ナチス 破壊の経済――1923-1945 / アダム・トゥーズ
ナチス 破壊の経済――1923-1945
  • 著者:アダム・トゥーズ
  • 翻訳:山形 浩生,森本 正史
  • 出版社:みすず書房
  • 装丁:単行本(504ページ)
  • 発売日:2019-08-09
  • ISBN-10:4622088126
  • ISBN-13:978-4622088127
内容紹介:
ナチスの経済政策が、いかに付け焼き刃に過ぎなかったかを圧倒的データで描ききった決定版、ついに邦訳。「大傑作」(ファーガソン)
ナチスの経済政策に関する通念を打ち砕き、すでに古典ともいえる評価を受けている歴史書『ナチス 破壊の経済』。上下巻延べ1000ページに及ぶこの大著はどこが「画期的」だったのか。山形浩生氏による訳者あとがきを抜粋してお届けします。

通俗的なナチス史理解をほぼ根こそぎひっくり返す

本書の概要

本書のテーマは題名通り、ナチス経済の興亡となる。そもそもナチ党が台頭してきた背景には経済的な要因があった。そして第三帝国の極度の軍事的領土拡張指向は、ヒトラー/ナチスの基本哲学である生存圏を本当に物理経済的に実現しようとしたことから生じたものだ。その軍事的な躍進は、ドイツ経済の工業生産力があればこその話であり、そして彼らが最終的に倒れたのも、いかにドイツの卓越した技術力をもってしても、米ソの圧倒的な経済・物量にはかなわなかったからだ。その意味で、ナチス・ドイツの興亡はすべて、経済的な環境が背景となっている。本書はそうした経済とその運営を軸に、第三帝国の軍国主義、思想、妄想、ホロコースト、その他あらゆる要素のつながりを描き出すことで、ナチス・ドイツについてのまったく新しい総合的な理解をもたらした、画期的な書物となる。
だがこう書いても、多くの方はピンとこないだろう。というのも、いま述べたような内容が特に目新しくは思えないからだ。経済を軸に第三帝国を見るのは、確かにそれなりに興味深いかもしれない。が、この程度の話はごく常識的なものではないだろうか。切り口の面白さこそあれ、こんな上下巻延べ1000ページにも及ぶ本を読むだけの価値はあるのだろうか? ナチス・ドイツについての一般的な通俗理解に対し、本当にいまさら「まったく新しい」理解なんか出てくるのだろうか?

本書の意義その一 ──通俗的なナチス史理解の転覆

それを説明するには、まずそもそも通俗的なナチス経済の理解とはどういうものかを示そう。もちろんこれは人によってちがうだろうが、訳者の理解はおおむね次のようなものだった。

第一次大戦に負けたドイツは、ヴェルサイユ条約により生産力を完全に奪われたうえに大量の賠償金支払いを義務づけられ、国民の生活は困窮するとともに、それがもたらしたハイパーインフレで経済が崩壊し、失業者も大量発生した。その不満に乗じて登場したのがヒトラー率いるナチ党だった。かれらはドイツ経済への不満を、ユダヤ資本(つまりはウォール街)の陰謀とすることでナショナリズムを盛り上げ、周辺国にちょっかいを出す一方で、アウトバーンをはじめとする公共事業により雇用を創出して失業を引き下げて経済を立て直すことで国内的な人気を博した。それにより動員体制を確立したナチス・ドイツは、一気に軍国化を進める。そしてドイツならではの高い技術力を活用し、戦車、ジェット戦闘機、Uボート、V2ミサイルなどの世界最先端の高性能兵器を次々に繰り出すとともに、その技術力で国民に対してもラジオや国民車フォルクスワーゲンなどを提供するに到る。そしてそうした最新兵器を駆使したまったく新しい戦略である電撃戦を編み出し、ヨーロッパを一気に制圧する。その後もアルベルト・シュペーアによる軍備の奇跡によりナチス・ドイツは躍進を続ける。しかしソ連侵攻に乗り出したところで、名戦車T─34の猛攻に加え、スターリンによる人命無視の残酷な操兵で予想外の苦戦に陥る中で、ドイツ国防軍は、かのナポレオンをも倒した冬将軍に撃退されてしまう。そしてほぼ同時にアメリカが参戦する。ノルマンディー上陸作戦と壮絶な空爆を伴う西からの米軍、そして東からのソ連赤軍侵攻にはさまれ、両者の圧倒的な物量の前に、月の裏と地底に逃れた残党たちを除いて第三帝国は消滅する……。

もちろん細かい物言いはつくだろうが、一般的な理解はこんなものだろう。そしてここにある基本的な見方は、なんだかんだ言いつつもナチスはかなりうまく経済運営をやった、というものだ。この見方によれば、彼らは第一次世界大戦の敗戦と荒廃からほんの10年そこそこで立ち直り、公共事業で雇用を作り出し、失業を減らし、不利な状況で生産力を維持し、国民向けの消費財も確保し、戦争末期の断末魔の中ですら奇跡的なサプライチェーン改革による増産と新兵器開発を維持している。こうした経済面での成功があればこそ、米ソとのすさまじい物量差にもかかわらず、一撃でひねりつぶされるどころか、5年以上にわたり善戦を続け、ときに連合国軍を絶体絶命のところにまで追い詰められたのでは? それは、戦後のドイツの躍進を見れば明らかだろう。ヒトラーが変な反ユダヤ人妄想を抱いて、ホロコーストのような暴挙に出たのは不幸な事故だったが、あれさえなければ、ドイツがグローバル経済の一員として躍進し、まったくちがう発展を遂げる道もあったのではないか……。 だが本書は、そうではないという。ナチス・ドイツの経済は、まったくそんなものではなかったのだ、と。
まず本書はいま述べたナチス興亡に関する通俗的な理解を、ほぼ根こそぎひっくり返す。その発端も、技術開発力も、フォルクスワーゲンも、アウトバーンや失業対策も、電撃戦も、ましてアルベルト・シュペーアの「軍備の奇跡」なるものも、さきほど言及した通俗理解のあらゆる部分は、実は一般的に思われているものとはまったくちがうのだ、と著者は述べる。「成功」とされるものは「成功」などではなく、「奇跡」とされるものは単なる偶然か、以前の施策が少し遅れて奏功しただけ。本書はそれを、嫌と言うほどのデータと裏付け資料で実証的に示す。
そしてそこから、ナチス経済についてのイメージも、当然ながら一変せざるを得ない。その経済は、確かにあれだけの不利な条件下で戦闘を何年も続けられたという意味では「成功」だったかもしれない。だがそれは生活や産業のあらゆる面における徹底した統制経済化により、かろうじて維持されたものにすぎなかった。そのすべては恐ろしいまでの危うい綱渡りであり、国家接収や暴力、恫喝と朝令暮改、国民はもとより各種捕虜、占領地域住民の、ホロコーストですら霞んで見えるほどの犠牲によりなんとか続いていたにすぎない。外向けに成功と思われているものの多く(特にシュペーア)は、単なるレッテルの貼り替えやプロパガンダでしかないのだ。

本書の意義その二 ──第三帝国を動かした経済要因

これほどありとあらゆる俗説をひっくり返しただけでも、かなりの成果とは言えるだろう。だが本書は「第三帝国ネタはいろいろ盛りすぎです」と指摘するだけにとどまらない。その経済的な分析をもとに、本書はナチス・ドイツの基本的な行動原理にまでふみこむ。各種経済的な要因こそが、まさに第三帝国のあらゆる動きの背後にあり、一見すると不合理な行動にも、実は経済的な必然性(少なくともヒトラーたちがそう思ったもの)に基づく合理性があったのだ。それを総合的に描き出したのが、本書の大きな手柄となる。

第三帝国の「合理性」──アメリカ覇権と、時間との戦い

第三帝国の「不合理な行動」とは? もちろんナチス・ドイツそれ自体が正気の沙汰ではない代物であり、そこに合理性なんか求めるだけ無駄、という立場もあるだろう。でも、狂信性と不合理は必ずしも同じではない。狂信者にだって(いや狂信者であればなおさら)自分の狂信を実現するための計算高さと合理性が必要なのだ。
そもそも第三帝国が繁栄したいなら、先ほど触れたように、ヤバい軍事活動になんか手を出さず、みんなと仲良くすれば技術力と経済力で十分天下をとれたのでは? その部分は「生存圏」とかいう妄想で目がくらんで、とにかく軍事活動がしたかったのだということにしてもいい。だがその軍事活動ですら、ナチ党のやり口はあまりに無理筋が多い。何よりも、なぜすべてにおいてあんなに急いだのか? 近隣国にちょっかいを出してから、そんなにすぐに英仏に挑む必要はあったのか? さらに電撃戦の大勝利で一躍有利なポジションを確保できたのに、なぜそれをしっかり活用もせず、即座にソ連侵攻なんか始めて墓穴を掘ったのか? 独ソ不可侵条約があったのだから、そちらはもう少し置いておけばよかったのでは?そしてそれ以前に、真珠湾を叩きにでかけた某国の末裔が言うのもなんだが、アメリカ相手の戦争は当時ですらかなり無謀ではあったはずだ。やるにしても、ゆっくり周到に駒を進めるのが当然では? なぜいきなり、全世界をまとめて敵にまわすような真似を? 本書は、まがりなりにもこれに対する答を出す。冒頭で著者が「通読しろ、ネタバレ禁止」と宣言しているので、あまり細かくは述べない。だがこれだけの分厚い本をいきなり通読しろというのも、いささか酷かもしれないので、いくつか重要な点については指摘しておこう。
まず本書はヒトラー/ナチ党の台頭を、突発的な独立事象と考えてはいない。著者にとってそれは、ヨーロッパ覇権の時代が終わり、アメリカの世界支配が始まろうとする20世紀初頭の、ヨーロッパの最後の悪あがきだ。ヒトラーは、アメリカのすごさは十分に承知していた。むしろそれだからこそ、アメリカに匹敵する土地/市場/資源を確保して張り合えるようにしたいと彼は考えていた。もちろんこれこそ、ヒトラーの「生存圏」構想だ。
そして、そのために世界経済の一員として活躍すればという発想も、ヒトラーにとって現実的なものではなかった。というか、ヒトラーが登場したのはまさに、それを目指したヴァイマル共和国とその首相シュトレーゼマンの試みが挫折したからなのだった。1930年代の世界は、大恐慌で各国とも経済が破綻して失業者が群れをなし、それを逃れるため金本位制離脱と壮絶な通貨切り下げで近隣窮乏策が横行していた時代。そこでグローバル貿易を通じた共存共栄などといっても、説得力はなかった。
するとドイツとしては、自前でなんでも用意できなくてはならない。植民地もないドイツがそれをやるには……周辺国の軍事的征服しかない。弱そうな連中を追い立て、容赦なくぶち殺すか奴隷化し、その土地と資源を奪う。なに、それについて、上から目線で説教されるいわれはない。当時の他のヨーロッパ列強が、まさに植民地でやらかしていたことじゃないか。
だが、これができるのはアメリカが覇権を固めるまでだ。残された時間は少ない。だからこそ、ヒトラーはとにかく急いだ。誰もが(身内ですら)無謀と考えた軍事的ギャンブルに次々と、信じられないくらい拙速に手を出し、必要ならアメリカとの反目も辞さなかった。アメリカが凄いのに、ではない。アメリカが凄いからこそ、無理をしてでも早めに手を打たねばならない!

ドイツ経済を動かした三つの不足

でも、それがすぐにできるなら苦労しない。ナチ党はこの狙いを実現するにあたり、三つの不足を順番に解決……はできないまでも、なんとかしのぐ必要があった。外貨、資源、そして労働力だ。そしてこの不足への対応が、ナチス時代のドイツ経済(特に国内経済)を完全に規定するようになる。

まずは外貨だ。いまと同じく、食糧も、石炭以外の資源もすべて輸入に頼っているうえ、ヴェルサイユ条約のせいで当分は賠償金を稼がねばならない。だから政権奪取時の最大の課題は、外貨をいかにしてやりくりするか、ということだった。輸出を確保しつつ輸入を徹底して抑えて外貨を稼ぐ一方、アメリカと欧州勢のそれぞれに対し、デフォルトをちらつかせることで債権と賠償請求権を対立・相殺させ、賠償金を先送り・減免させつつ、やがてヴェルサイユ条約の破棄に持ち込み、再軍備を実現する──それが第三帝国の最初の課題だった。

その次に登場したのが、資源の問題だ。ヴェルサイユ条約を蹴っぽり、賠償金を踏み倒しつつ猛然と軍備拡張に走った第三帝国の次のボトルネックは、資源、特に鋼鉄となる。限られた鋼鉄生産量を、陸海空軍(さらに外貨稼ぎの輸出品)のどこにまわすべきか? 何を、どう作るべきか? これが軍事戦略上の思惑ともからみあい、ナチス時代のドイツ経済を大きく左右するとともに、その成果が第三帝国の軍備を直接的に決定づけてしまう。

そして最後にある程度の工業生産を確保して本格的な第二次世界大戦に突入したところで、上記の二つに加えて浮上してきたのが、労働力の問題だ。兵員、軍備/工業生産、食糧生産(農業)に、人をどう割り振るべきか? ナチ党が政権を奪取した時点では失業者があふれていたドイツ経済は、いまや圧倒的な人不足に陥る。同時に、人のみならず、その人々に喰わせる食糧が大問題となる。

そしてこのそれぞれの不足について、一貫して同じ対応が続いた。外貨が不足したら、国内では完全な外貨統制と割当制、そして国外からは強奪だ。資源や物資が不足したら、これまた片端から完全な国家管理と割当制が行われ、もちろん軍事的な強奪。そして、最後の人不足でも各種産業への人繰りをすべて政府が管理統制し、使える人間はすべて動員して、足りない分は捕虜や占領地の住民を徴発。食糧についても、もちろん喰わせるべき人間を選別して統制配給を実施、要らない人間は餓死させて口減らし……。

その結果登場したのは、もはや市場がほとんど機能しない、完全な統制計画経済だ。インフレを忌み嫌ったドイツ/ナチ党は、価格統制で物価を抑えるが、いずれにしても物資その他はすべて国が計画配分するので、そもそも「物価」という概念自体が大した意味を失っている。そしてその経済計画と統制の複雑なシステムのために、異様な官僚機構が発達し、それが権益拡大を目指してさらなる統制を招く。そしてこの統制が、ナチ党/ヒトラーの反セム思想や異様な農本主義と深くからみあうことで、かのホロコーストや、それよりさらに恐ろしいとすら言える、東部での飢餓計画が平然と実行される……。

本書は、そのプロセスを一つ一つ、ていねいかつ実証的にときほぐす。そこから生じる本書最大の魅力と成果は、当時の世界経済秩序とその崩壊から、いかにナチス・ドイツが半ば必然的に生まれ、そして一般的にはあまり認識されていないほど異様な統制経済を造り上げたかについて、詳細かつ首尾一貫した構図を描き上げたことだ。しばしばヒトラーやナチスの奇異な妄想扱いされる、反ユダヤ主義などの異様な思想も、その中にしっかり組み込まれ、経済を動かすとともに、経済条件により強化され、有機的にからみあっていることが示される。  

本書の意義その三 ──人間ドラマと現代への/からの視座

そしてそれを実行した人々についても、本書は実に赤裸々/容赦ない。たとえば帝国銀行総裁のヒャルマル・シャハト。金融政策のみならず、債権者へのはったりや脅しを縦横に駆使し、ドイツの外貨準備を切り盛りしたこの人物の手腕は戦慄するほどのものだ。彼がもっと凡俗で、常識的な経済政策を支持するだけしかできなければ、ヒトラーを頓挫させることも十分できたはずだ。だがなまじ有能だったが故に、彼はアクロバチックな手管で難局を何度も切り抜けおおせてしまう。すさまじい権力欲とプライドのためひたすらヒトラーを支え、そして経済の完全統制化への先鞭をつけたのも彼だ。
また技術的にも規模的にも世界有数だった各種ドイツ製造業企業は、ヒトラーの狙いをサボタージュすることもできたはずだが、軍需景気に浮かれてそのお先棒をかつぐうちに、完全に身動きがとれなくなり、自爆に到る。その他あらゆる分野で、異様に優秀な人々が、目先の業績達成にその能力をなまじ発揮したが故に、経済社会の根本的な問題を先送りして事態を悪化させ続けるのだ。その人間ドラマも、本書の大きな魅力だ。
ケチをあえてつけるとすれば……ナチス・ドイツを少しでもほめる通俗的な見解を否定しようと焦りすぎているように思えなくもない部分はある。たとえば、ナチ党が国民に支持されたのは、アウトバーンなど各種公共事業で失業を激減させたせいだ、というのが通念だ。それに対して本書は、各種公共事業や、中でもアウトバーンは、失業対策などという意図はないも同然か、あっても看板だおれで、あくまで軍事的な狙いが主眼だったし、どのみちあまり人は雇えていないし需給マッチングもうまくできていない、よって通念はまちがっている、と述べる。
それは、そこだけ見ればその通りなのだろう。でもその一方で、意図したかどうかにかかわらず、これ以外のものも含め各種の施策を通じて失業が大幅に減ったのは事実だ。だったら、それはそれで評価してよいのでは? 通念にも一理あるのでは? また著者は、ケインズ(とその経済学)にも異様に厳しい。公共事業と雇用創出の話もそうだが、ケインズとその『一般理論』が経済成長の可能性などまったく考えていないというのは、大恐慌の中ですら万人が豊かすぎて暇をもてあます未来像を描いた「孫たちの経済的可能性」の著者についての見解としては少し偏りすぎでは? だが、これは本書の本題からすれば、いささか揚げ足取りだろう。
本書は最後に、戦後のドイツが採った、新しい世界秩序の中での別の道筋について簡単に触れる。もちろんヒトラーの選択肢は愚かだった。だがそれは当時の世界秩序に強いられた面も大きい、というのが本書の主張だ。そして同様に戦後の米ソ覇権という新秩序に強いられ、第三帝国の真逆として設定された東西ドイツのたどった道は、どう評価すべきだろうか。いや、そもそも米ソ覇権の冷戦構造およびポスト冷戦構造の中で、ドイツ、ひいてはヨーロッパの政治経済体制は、もはやかつてのような「評価」に値するほどの重要性を持っているのだろうか。そしてそこから振り返ったとき、かのナチス・ドイツの興亡について、また別の見方も浮かび上がってくるようにも思える。読者のみなさんは、どうお考えになるだろうか?

著者について

著者アダム・トゥーズは経済史研究者であり、当初から一貫して20世紀初頭のドイツ経済を核に、世界経済秩序の変化と政治との関わりを描き出すのが主な関心となる。本書は彼の文句なしの代表作だ。原著刊行時点ではケンブリッジ大学の歴史学部准教授であり、現在はコロンビア大学教授を務める。最新作はドイツ経済を離れ、リーマンショック/世界金融危機後の各種世界経済再編を描いた大著 Crashed (2018)となる。本書が、アメリカ覇権の確立と、それに対するヨーロッパの最後の悪あがきとしてのナチス・ドイツを描いたのに対し、こちらは21世紀の冒頭におけるアメリカ主導の世界経済/金融秩序の揺らぎと変貌が主題だ。こちらも非常に高い評価を受けている。

[書き手]山形 浩生(訳者)
ナチス 破壊の経済――1923-1945 / アダム・トゥーズ
ナチス 破壊の経済――1923-1945
  • 著者:アダム・トゥーズ
  • 翻訳:山形 浩生,森本 正史
  • 出版社:みすず書房
  • 装丁:単行本(504ページ)
  • 発売日:2019-08-09
  • ISBN-10:4622088126
  • ISBN-13:978-4622088127
内容紹介:
ナチスの経済政策が、いかに付け焼き刃に過ぎなかったかを圧倒的データで描ききった決定版、ついに邦訳。「大傑作」(ファーガソン)

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