親子で楽しむ隠し絵
弟夫婦を誘って、沖縄子連れ旅を楽しんできた。息子は、前回の沖縄旅行でイルカに夢中になり、その後イルカの本を熱心に読んでいたことは、すでにご紹介した。本でさまざまなことを知ると、さらにまた本物に会いたくなってしまうらしい。イルカ熱は冷めるところを知らず、今回は一緒に海に入る(といっても膝ぐらいまでだが)プログラムに挑戦した。昼間見たイルカの真似をする吾子がベッドの海を泳ぎつづける
印象的だったのは、イルカが胸びれを使って握手(あくしゅ)してくれたときの感触だ。
「かたいね~」
「うん、かたい。背中とかお首よりも、かたい」
指導してくれたお姉さんが、すかさず教えてくれる。
「ここは、人間の手と同じで、中に指のような感じで骨があるんですよ」
そうか、だからかたいのだ。旅から帰って、再びイルカの本を開くと、骨の図版がある。見れば、確かに指のような骨だ。
「これこれ、これがあるから、かたかったんだね!」
読書と体験のリンク……なんて言うと大げさだが、読むことが体験を支え、体験することがまた読書の楽しみを広げる、というふうになっていってくれたらいいな、と思う。
さて、前置きが長くなってしまったが、今回の旅の収穫のひとつに「旅のおともにぴったりな本との出会い」がある。
『文明の迷路~古代都市をめぐってアトランティスへ』。一緒に旅行した甥(おい)っ子が持参していたものだ。さまざまな古代文明をテーマにした緻密(ちみつ)な絵があり、その絵の中には迷路やクイズや隠し絵が仕込まれている。
「ライオンはどこかな~」「あっ、ここにはワニがいるよ」「つぎは、キリン。どっちが早く見つけるか、競争しよう」
親子で盛り上がりながら、ゲーム感覚で楽しく遊べる本だ。ページごとに緩やかなつながりはあるものの、ストーリーがあるわけではないので、ちょっとした待ち時間などに、もってこい。大判で、ちょうど見開き二ページずつで完結しているところは、乗り物に乗っているときなど、実にありがたい。
もちろん「旅行用」として甥っ子は購入したわけではなく、今一番お気に入りのものということで持って来た。が、旅先で出会った私は、この本の旅行向きなところに、いたく感心してしまった。
隠し絵というのは、意外と子どものほうが見つけるのが得意だったりして、息子は私を負かしては、もう鼻高々である。大人でもけっこう夢中になれるもので、弟夫婦も「実は自分たちもハマっている」とのこと。
ちなみに、ホテルの近くに真栄田(まえだ)岬という岬があって、その近くに磯(いそ)遊びに行ったときのこと。弟が景色を眺めながら、ふいにつぶやいた。
「あ~、あの岬の中に、犬の横顔が見える……これって、隠し絵のやりすぎかな」
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