書評

『スターリンの対日情報工作 クリヴィツキー・ゾルゲ・「エコノミスト」』(平凡社)

  • 2017/11/03
スターリンの対日情報工作 クリヴィツキー・ゾルゲ・「エコノミスト」  / 三宅 正樹
スターリンの対日情報工作 クリヴィツキー・ゾルゲ・「エコノミスト」
  • 著者:三宅 正樹
  • 出版社:平凡社
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2010-08-11
  • ISBN-10:4582855407
  • ISBN-13:978-4582855401
内容紹介:
日独防共協定の内容を締結前から完全に把握していたクリヴィツキー、東京を基点に強大な情報網を築き上げたゾルゲ、そして、一九四一年六月に始まった独ソ戦以後の日本の動きについて、核心に迫る情報をモスクワに流していた日本人スパイ「エコノミスト」。スターリン体制下におけるソ連の対日情報工作の多面的な実相を描く。

日本人スパイの正体にも迫る

実績豊かな現代史学者の手になる本書は、中身の濃い労作である。第2次大戦中のソ連の日本に対する情報活動の全貌(ぜんぼう)が、手際よくまとめられている。

当然ながら、ゾルゲ事件に費やされるページが、最も多い。中でもゾルゲがコミンテルンとソ連赤軍第四本部の、いずれの組織に所属していたか、それがいかなる意味を持つかについて綿密な分析が行われている。

また、日独防共協定に付された秘密軍事協定の存在を、いち早くスターリンに報告したクリヴィツキーに関する考察も、新旧の資料を駆使して余すところがない。さらに、当時の日本の外交暗号が米英ばかりかソ連にも傍受解読されていた事実が、一章をあてて紹介される。

圧巻は、従来あまり語られることのなかった、日本人スパイ〈エコノミスト〉について、その正体に鋭く迫るくだりだ。これまでに元ソ連駐在大使館参事官の天羽(あもう)英二など、何人か〈エコノミスト〉に擬せられた人物がいたが、著者はソ連から出た機密文書などから、別のある人物を指名する。

スターリンの対日情報工作を描いて、過不足のない入門書といえよう。
スターリンの対日情報工作 クリヴィツキー・ゾルゲ・「エコノミスト」  / 三宅 正樹
スターリンの対日情報工作 クリヴィツキー・ゾルゲ・「エコノミスト」
  • 著者:三宅 正樹
  • 出版社:平凡社
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2010-08-11
  • ISBN-10:4582855407
  • ISBN-13:978-4582855401
内容紹介:
日独防共協定の内容を締結前から完全に把握していたクリヴィツキー、東京を基点に強大な情報網を築き上げたゾルゲ、そして、一九四一年六月に始まった独ソ戦以後の日本の動きについて、核心に迫る情報をモスクワに流していた日本人スパイ「エコノミスト」。スターリン体制下におけるソ連の対日情報工作の多面的な実相を描く。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2010年10月3日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
逢坂 剛の書評/解説/選評
ページトップへ