前書き

『コロナ後の世界経済 米中新冷戦と日本経済の復活!』(集英社)

  • 2020/10/13
コロナ後の世界経済 米中新冷戦と日本経済の復活! / エミン・ユルマズ
コロナ後の世界経済 米中新冷戦と日本経済の復活!
  • 著者:エミン・ユルマズ
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(256ページ)
  • 発売日:2020-09-25
  • ISBN-10:4087861325
  • ISBN-13:978-4087861327
内容紹介:
米中新冷戦の激化、コロナ後の世界的な大不況にも拘らず上昇する株価。激動する世界経済の中、日本に空前の投資チャンスが到来!

はじめに 

30年後に2020年を振り返ったとき、多くの人々が「あの年に世界が変わった」と思うことでしょう。2020年に起きた出来事は実に、100年に一度起きるような大転換の事件ばかりです。新型コロナ禍はもちろん、あまりにいろいろなことが起こりすぎて、年初に起きた事件はすでに忘れてしまったくらいです。アメリカによるイラン革命防衛隊司令官の暗殺やカルロス・ゴーン被告の逃亡事件、2月から3月にかけての世界の株式市場の記録的な暴落などは、昔のことのようにさえ思ってしまいます。

私が5年前から指摘していた「米中新冷戦」は、2020年には誰もが口にするような〝常識〟になりました。新冷戦のスタートは2013年のシリアの内戦ですが、米中の最初の真剣な衝突は2020年に起こりました。そのきっかけをつくったのは新型コロナ・パンデミックです。

一国が覇権国家になるためには、世界の他の国々に独自の政治システムと思想を提案する必要があります。経済的に強くなるだけでは覇権国家になることはできません。イデオロギー的にも優位に立つ必要があります。第二次世界大戦後の米ソの覇権争いは「資本主義と共産主義」というイデオロギー対立でした。ある意味とてもわかりやすかったのです。営利目的の個人つまり資本家によって国の商業や産業が制御されるシステムに対し、個人の財産所有を制限して財産の一部または全部を共同所有しながら国家主導で経済活動を行うシステム。資本主義世界は自由主義を訴え、共産主義世界は平等主義を訴えました。

では今回の米中の対立には、どんなイデオロギーの対立があらわれているのでしょうか? 実際に、いままでの中国はアメリカに対抗できるようなオルタナティブ(代替)の思想や政治システムを提案してきませんでした。少なくとも世界はそれを知りませんでした。しかし、新型コロナ・パンデミックをきっかけにそれがはっきりしたわけです。アメリカはいままでどおり自由で開かれた市場と民主主義を軸にした思想を掲げるのに対し、中国は国家主導の経済と一党独裁による監視社会を掲げています。中国はハイテクを駆使した監視体制のおかげで感染被害を抑えることができ、全世界に自国の政治システムはすぐれているとアピールすることができました。つまり、パンデミックがつくった特殊な世界環境だからこそ中国モデルが成功したとも言えます。考えてみれば、強い国家体制のもとに天下統一を図り、平和と安全を守る、しかしその代わり国家への完全なる忠誠心を要求する、というのは中国の古代から変わらない考え方です。米中対立が新しい冷戦であることに世界が気づくまでに時間がかかった背景には、中国のこのような独自の思想に世界があまり馴染んでいなかったからだと思います。

さらに世界の人たちにとって最も理解しにくい点は、米中新冷戦が米ソ対立のように資本主義対共産主義の対立ではないことでしょう。中国の億万長者の数は、世界で二番目に多いのです。政府に逆らわず言うことを聞いているかぎりお金を稼ぐことに文句は言われません。もちろん、稼いだお金は自由に海外に持ち出すことはできませんが、国内で使うぶんには問題がありません。しかも、一旦金持ちになった人こそ政権を支持するインセンティブが高くなります。発展したとはいえ貧富の差は激しいので、いわゆる低所得者層の怒りと反乱を恐れているからこそ富裕層においては忠誠心と支持が強まります。もちろん中国の起業家はいままで自由市場と自由世界貿易の恩恵を存分に受けてお金を儲けた人がほとんどです。米中新冷戦によって儲けるのが難しくなったら政権への態度が変わる可能性が多少なりともあるでしょう。なぜならば、米中対立は今後、より一層、世界経済に大きな影響を与え続けることは間違いないからです。世界はふたたび東西で分断し、アメリカと中国の経済圏もそれぞれ分かれていくことになるでしょう。つまり、世界経済はグローバル化からブロック化へ移行します。

パンデミックは米中新冷戦のきっかけでも結果でもありませんが、冷戦開始プロセスを加速させたカタリスト、つまり触媒のようなものです。世界の製造業はいかに中国に依存しすぎているのか、主要国はいかにクリティカルな物資を中国から調達しているのかということに気づくきっかけになりました。今後自由主義経済と中国経済は時間をかけてデカップリング(切り離し)していきます。

しかし私はこの流れは日本にとって悪いことではなく、むしろチャンスだと考えています。70年に一度しか来ない大チャンスです。それが日本経済の復活をもたらし、結果的に日本株も大きな上昇サイクルに入ります。ではなぜそうなるのか? 具体的に何が変わるのかについてはこの本でじっくり解説させていただきました。是非お読みください。

[書き手]エミン・ユルマズ

コロナ後の世界経済 米中新冷戦と日本経済の復活! / エミン・ユルマズ
コロナ後の世界経済 米中新冷戦と日本経済の復活!
  • 著者:エミン・ユルマズ
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(256ページ)
  • 発売日:2020-09-25
  • ISBN-10:4087861325
  • ISBN-13:978-4087861327
内容紹介:
米中新冷戦の激化、コロナ後の世界的な大不況にも拘らず上昇する株価。激動する世界経済の中、日本に空前の投資チャンスが到来!

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