書評

『カントとカモノハシ』(岩波書店)

  • 2022/01/05
カントとカモノハシ / ウンベルト・エーコ
カントとカモノハシ
  • 著者:ウンベルト・エーコ
  • 翻訳:和田 忠彦
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:単行本(331ページ)
  • 発売日:2003-03-28
  • ISBN-10:4000224301
  • ISBN-13:978-4000224307
内容紹介:
カモノハシをもしもカントが見ていたら? 「記号論」で宙吊りにされていた、知覚、指示、類像、真実、言語と経験の関連などの問題に踏み込み、日常の事物を素材に数々の思考実験を繰り広げながら人間の認識メカニズムに挑む。
難解だけれど、愉快な本だ。判断の基礎理論に取り組んだカントと、あらゆる分類の試みに挑戦するために生まれてきたかのようなカモノハシ。その二つの象徴のあいだに、本書は居座る。たとえば妻を帽子と間違わないでいられる、あるいは◎と横線の交差した図を自転車に乗るメキシコ人と見てしまう、そのように、何かを何かとして認知するのはどういうプロセスでなりたっているのか。この問題をめぐって、指示・認知・類似・真理をめぐる哲学の議論が飛び交う。が、話のかみあわなさ、勘違い、錯覚など、動員される事例がなんとも軽妙洒脱(しゃだつ)で、まるで推理小説のような語り口。そして、意味は「好意」と「契約」によって確定されるという、魅力的な議論。

緻密(ちみつ)な論理の連続なのに読者の気を逸(そ)らすことがないのは、エーコが、ひとの経験や認知の<媒介の構造>を問うという二十世紀哲学の問題の核心にずばり迫っているのと、そして何よりも人間好きであるからだ。
カントとカモノハシ / ウンベルト・エーコ
カントとカモノハシ
  • 著者:ウンベルト・エーコ
  • 翻訳:和田 忠彦
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:単行本(331ページ)
  • 発売日:2003-03-28
  • ISBN-10:4000224301
  • ISBN-13:978-4000224307
内容紹介:
カモノハシをもしもカントが見ていたら? 「記号論」で宙吊りにされていた、知覚、指示、類像、真実、言語と経験の関連などの問題に踏み込み、日常の事物を素材に数々の思考実験を繰り広げながら人間の認識メカニズムに挑む。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2003年11月2日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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