自著解説

『誹諧短冊手鑑』(八木書店古書出版部)

  • 2021/10/28
誹諧短冊手鑑 / 永井 一彰
誹諧短冊手鑑
  • 著者:永井 一彰
  • 出版社:八木書店古書出版部
  • 装丁:大型本(470ページ)
  • 発売日:2015-08-20
  • ISBN-10:4840696950
  • ISBN-13:978-4840696951
内容紹介:
江戸初期俳人756名、804枚の短冊を高精細カラーで影印! 様々な階層の俳人の素性を伝える画期的な新出資料!
本書編者が2010年に入手した短冊帖は、江戸初期の著名俳人を網羅する驚愕の新出資料であった。保存状態極美のその姿を、高精細カラー図版と詳細な解説で紹介!
 
雪・月・花三帖から成る本手鑑は、貞門・談林の主要俳人をほぼ網羅し、七五六名八〇四枚の俳諧短冊を収録する。古筆九代了意が作成した人名録「寛文頃誹諧宗匠并素人名誉人」の典拠であること、現姿が古筆十代了伴によって調製されていることから、古筆の家に文字通りの鑑定用手鑑として伝来して来たものというのが私の見立てである。短冊にはオレは言うまでもなくスレ・ヤケ・ムシが殆ど見られず、大げさな言い方をすれば昨日染筆したかのように美しいのも篋底深く秘蔵されて来たことを物語る。もともとの成立は、寛文から天和にかけての二〇年ほどの間に、古筆鑑定に関わる何人かによって蒐集され、誰であるかは特定出来ないものの某編集子の手によって元禄に入る直前に元姿調製が行われたと考えられること、本書解説を参照されたい。

本手鑑の資料的意義は、ほぼ次の三点に尽きる。

 

様々な階層の俳人たちの第一級筆跡資料


その一は、貞門・談林期の俳諧に関わった人々の第一級の筆跡資料であるということである。芭蕉が江戸談林宗匠の一人としてしか扱われていないという事実が象徴するように、俳諧史観が十分に成熟していない時代の限られた期間に、古筆鑑定に関わる人物が独自のネットを使って、公家・大名・旗本・地下・神官祢宜・門跡・釈氏・家中衆・連歌師・女筆・能書・古筆・俳諧点者・町衆といった様々な階層を縦断して集中的に蒐集したものであるから、後世のコレクターが蒐集整理した短冊帖にありがちな偽物が紛れ込む余地は全くと言ってよいほど無い。一人一人について確認は出来ていないが、おそらくこの手鑑に収録される半数以上の人物は、短冊が紹介されたことは未だないのではないか。
 


裏書・札が伝える短冊染筆者の素性


二つめは、本手鑑収録短冊の裏書及び札の情報である。殆どの短冊に蒐集当時のものと思われる裏書を有する。編集子はそれを基に札を作成し、帖に短冊と共に貼って整理しているのであるが、それは機械的に行われているのではなく、裏書記述後の新情報も丹念に拾い、また誤りなども修正する。それら裏書・札が伝える短冊染筆者の素性についての情報は、他の資料と照合してみると驚くほど詳細・正確で臨場感がある。貞門・談林期に俳諧に関わった人々の素性については分からないことが多いのであるが、本手鑑と『貞門談林俳人大観』などを併用することによって数多くの染筆者の素性が明らかになって来る。その具体的な事例も、本書解説で御覧いただきたい。

 

華美を極めた短冊装飾のエキシビション


三つめには、今回は考察に及ぶことが出来なかったが、短冊の装飾ということも今後の大きな研究課題となる。俳諧短冊の装飾が華美を極めた時代のものがこれだけ纏まっている例は他には無く、その問題を考えて行く基本資料となることも間違いない。


[書き手]永井 一彰(ながい かずあき)
奈良大学名誉教授。博士(文学)。

〔主要著書〕
『蕪村全集第2巻連句』(2001年、講談社、分担執筆)
『藤井文政堂板木売買文書』(日本書誌学大系、2009年、青裳堂書店)
『月並発句合の研究』(2013年、笠間書院、平成26年度文部科学大臣賞受賞)
『板木は語る』(2014年、笠間書院、平成26年度日本出版学会賞受賞) など
 
[初出媒体]
『日本古書通信』第1035号(2015年10月号)より抄録
誹諧短冊手鑑 / 永井 一彰
誹諧短冊手鑑
  • 著者:永井 一彰
  • 出版社:八木書店古書出版部
  • 装丁:大型本(470ページ)
  • 発売日:2015-08-20
  • ISBN-10:4840696950
  • ISBN-13:978-4840696951
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