怒り、憎しみ、悔しさ、不安、恐れ……ネガティブな感情が自分の中に衝き上げてきて
手に負えなくなる――そんな経験をしたことはないでしょうか?
石井裕之さんを11年ぶりの書籍執筆へ向かわせたのは、
不寛容でいじわるで攻撃的なこの世の中で、
こころを壊してしまう人のあまりに多いことでした。
11年ぶりの著書『私の中のこの邪悪な感情をどうしよう?』から、
今回特別に「まえがき」を全文公開します。
あの伝説のパーソナルモチベーター石井裕之さんが、
11年ぶりの書き下ろす、
ネガティブな感情で自分の心を壊さないためのヒントです。
まえがき
本書を手にとってくれてありがとう。キミと僕の間には、きっとなにかの「約束」があったに違いありません。どうしても、僕にはそう思えます。16年前に『ダメな自分を救う本』を上梓しました。たいへんご好評をいただき、単行本は10万部を超えるベストセラーとなり、2010年に文庫化されてからもずっと版を重ねています。
自信がもてない。劣等感をぬぐえない。自分のことが好きになれない。いつの時代にもある、普遍的なテーマだということでしょう。
しかし、ここ10年くらいの間に、世の中はほんとうに大きく変わりました。テクノロジーが加速度的に進歩していくいっぽうで、僕たちの精神はかつてないほど息ぐるしいところに追い詰められています。信じられないほど不寛容でいじわるで攻撃的な世の中になりました。
ただ僕が年をとって時代についていけないからそう思うのだとも言えないでしょう。なぜなら、50代・60代の自殺率が大きく減少するいっぽう、20代の自殺率がもっとも大きく増加しているという統計もあるからです。僕は統計というものを無条件に信じてはいませんが、それでも、若い人ほど、たましいが柔らかく、それゆえに時代の荒廃をダイレクトに感じて苦しんでいるということは言えると思います。
世の中を批判したいのではありません。なぜなら、なによりも、僕ら自身のこころの中に、怒りや憎しみ、攻撃性が、どうしようもなく衝き上げてきて暴れ、手に負えなくなってきているからです。
ルドルフ・シュタイナーはこれを「人類は境域を超えた」と表現しています。つまり、意識と無意識の間にあった壁が壊れて、いまや、無意識から邪悪な想念が意識の中にどんどん入り込んできているというのです。シュタイナーは百年近くも前に亡くなった神秘思想家ですが、いまの時代になってようやく僕たちは、この「人類は境域を超えた」ということをどうしようもなく切実に感じているのではないでしょうか。
僕が主宰するコミュニティ、沢雉会(たくちかい)では、こういった危機的な状況の中で、いかに自分のこころを壊さずに生きていけるかということを考え、それぞれの人生の中で実践しています。今回、その沢雉会のメンバーとの共著という形で、この本を作ることになりました。
しかし、「真剣であっても、深刻になってはいけない」というのが僕のモットーです。苦しい状況においてこそ、軽やかさを忘れてはいけないと思います。そのような本になったと自負しています。
どうぞ、最後までおつきあいください。
石井裕之