書評

『歴史を知る読書』(PHP研究所)

  • 2023/09/19
歴史を知る読書 / 山内 昌之
歴史を知る読書
  • 著者:山内 昌之
  • 出版社:PHP研究所
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2023-04-15
  • ISBN-10:4569854427
  • ISBN-13:978-4569854427
内容紹介:
頼山陽の『日本外史』は司馬遼太郎の小説に匹敵するほど面白い本である。一方で偏った読み方をされやすい一冊でもあり、例えば吉田 松陰は弟子たちと本書を読む際、平和を築いた徳川の功績を… もっと読む
頼山陽の『日本外史』は司馬遼太郎の小説に匹敵するほど面白い本である。
一方で偏った読み方をされやすい一冊でもあり、例えば吉田 松陰は弟子たちと本書を読む際、平和を築いた徳川の功績を全く無視してしまった。古代ギ リシアのプルタルコスが説く「ヘロドトスの悪意」の第三に当たると言えよう――。

歴史学の泰斗が歴史書を読む愉しみや落とし穴を語った上で、青春時代最も感動した作品『留魂録』、美談や偽善では民主主義を守れないことを教える『ギリシア人の物語』、大きな時間枠でエネルギーを考える『エネルギーの人類史』など名著75冊を紹介。

古今東西の歴史に精通する博覧強記の歴史家による読書案内。国際関係史と中東・イスラーム地域研究を専門としながら、近著に『将軍の世紀』上下(文藝春秋)を出したことからも、見識の深さが感じられる。

通称「アラビアのロレンス」による『知恵の七柱』は、毛沢東も北ベトナム軍も南ベトナム解放民族戦線も、そこから苛酷なゲリラ戦の様相を学んでいたのに、イラク戦争時のアメリカ軍は、まったく見向きもせず、単独覇権の失敗後に気がついたという。なんという指導者たちの無知と傲慢かと非難されるだろう。

著者が青春の日にいちばん感動したのが吉田松陰の『留魂録』だという。行年(ぎょうねん)三十にして刑死直前の松陰は「今日死を決するの安心は……」と自らに言い聞かせる。その辞世の句は「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留置(とどめお)かまし大和魂」と物悲しい。

サマセット・モーム『アシェンデン』は、作家自身が第一次世界大戦中に英国陸軍諜報部の部員として活躍した体験をもとに、連作読切形式の短編集を仕上げる。鋭い人間観察と政治・社会の情景点描が結びつき、歴史の本質にかかわる面白さがあるという。

歴史を知る読書 / 山内 昌之
歴史を知る読書
  • 著者:山内 昌之
  • 出版社:PHP研究所
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2023-04-15
  • ISBN-10:4569854427
  • ISBN-13:978-4569854427
内容紹介:
頼山陽の『日本外史』は司馬遼太郎の小説に匹敵するほど面白い本である。一方で偏った読み方をされやすい一冊でもあり、例えば吉田 松陰は弟子たちと本書を読む際、平和を築いた徳川の功績を… もっと読む
頼山陽の『日本外史』は司馬遼太郎の小説に匹敵するほど面白い本である。
一方で偏った読み方をされやすい一冊でもあり、例えば吉田 松陰は弟子たちと本書を読む際、平和を築いた徳川の功績を全く無視してしまった。古代ギ リシアのプルタルコスが説く「ヘロドトスの悪意」の第三に当たると言えよう――。

歴史学の泰斗が歴史書を読む愉しみや落とし穴を語った上で、青春時代最も感動した作品『留魂録』、美談や偽善では民主主義を守れないことを教える『ギリシア人の物語』、大きな時間枠でエネルギーを考える『エネルギーの人類史』など名著75冊を紹介。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2023年8月26日

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