書評

『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)

  • 2023/10/26
たまたま生まれてフィメール / 小川 たまか
たまたま生まれてフィメール
  • 著者:小川 たまか
  • 出版社:平凡社
  • 装丁:単行本(200ページ)
  • 発売日:2023-05-12
  • ISBN-10:4582839231
  • ISBN-13:978-4582839234
内容紹介:
なんの絆か。なんの呪縛か。ときどきすごく滑稽に感じる。結婚と夫婦別姓、政治とジェンダー、透明化される性犯罪被害者の声――。性暴力を取材しつづけるライターの著者が、この国で生きる… もっと読む
なんの絆か。
なんの呪縛か。
ときどきすごく滑稽に感じる。

結婚と夫婦別姓、政治とジェンダー、透明化される性犯罪被害者の声――。
性暴力を取材しつづけるライターの著者が、この国で生きる女性やマイノリティが直面する困難を問い直す、フェミニズム・エッセイ。


【目次】
はじめに

1 夫婦って、家族って
なんで結婚したんだろう/ダブルインカムツーキッズ/祖父の話/夫の家事能力が高い

2 日本社会がよくわからない
お前らの本音と建前/祟りと滅び/男の本能にエビデンスはいらないんだって/海の近くの裁判所/16年後の判決

3 フェミと政治とインターネット
エモよりデモを(1)親ガチャ・DHC問題/エモよりデモを(2)「女性はいくらでもウソをつける」/エモよりデモを(3)「ホームレスデート」と、暴力と排除に抗議するデモ/ヴィーガンとフェミニストと、なりすます人/特定した話/フェミと選挙

4 私の身体と人生と
毛を抜く人生/自分の具合悪さは自分にしかわからない/占いからの怒られと抵抗/おたまさんと、恋愛のない生活

おわりに


【著者プロフィール】
1980 年東京生まれ。大学院卒業後、2008 年に共同経営者と編集プロダクションを起ち上げ取締役を務めたのち、2018 年からフリーライターに。Yahoo! ニュース個人「小川たまかのたまたま生きてる」などで、性暴力に関する問題を取材・執筆。著書に『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)、共著に『わたしは黙らない―性暴力をなくす30の視点』(合同出版)。
新聞をめくると、大抵どこかで政治家による失言が報じられている。ずっと失言が繰り返される、それってつまり、失言ではなく本音なのだ。

どれだけその手の発言を重ねても、大物になればなるほど岩盤支持層が支え、メディアもいつの間にか報じるのをやめて、SNSでは「問題だけど、吊るし上げているだけでは変わらないよね」と冷静な自分をアピールする人が現れる。これらが絡み合い、なかったことにされるのだ。

『たまたま生まれてフィメール』(小川たまか著・平凡社・1980円)は、ジェンダーをめぐる問題を取材し続けてきた著者が、自身の経験や目の前の生活を綴りながら、この国の変わらなさ、その理由を探し当てようと試みる。

なぜ森喜朗はずっとああなのか(詳細を伝える紙幅がないので「ああ」でいいだろう)。「この人は本当に周囲から守られているんだな」「そうでなければ、ここまで自分を客観視できない事態にならないと思う」と小川は書く。彼がああなのは、彼だけではなく、あちこちで「女は〇〇」という断定が繰り返され、それが結論にされてきたから。

政治と個人、社会と生活は当たり前のように連結しているのに、政治や社会問題について書く物書きは、そっち系の人、と遠ざけられる。気づけば主流は、読み手をエモい(心が揺さぶられる、との意)気持ちにさせる、心地よくさせる記事や書き手になった。以下の小川の指摘に唸る。

「解決策の見出せない社会問題に向かい合うよりも、人々はわかりやすいエモを求めているのだ。たのしくて、ふわふわして、こころがふるえるものが、いいと、おもうよ。けれど私は感じざるを得ない。エモの中に潜んだ政治性を」

そう、あれ、政治的なのだ。声を上げている人の前に立ちはだかるわけではない。とにかく遠くにいて、エモい記事にほっこりする。結果、いつもの人がこれまでの言動を繰り返す流れが保たれる。今この社会で起きていることを、個人の目だけで捉えたこの本を読むと、そんな流れがクリアに見えてくる。
たまたま生まれてフィメール / 小川 たまか
たまたま生まれてフィメール
  • 著者:小川 たまか
  • 出版社:平凡社
  • 装丁:単行本(200ページ)
  • 発売日:2023-05-12
  • ISBN-10:4582839231
  • ISBN-13:978-4582839234
内容紹介:
なんの絆か。なんの呪縛か。ときどきすごく滑稽に感じる。結婚と夫婦別姓、政治とジェンダー、透明化される性犯罪被害者の声――。性暴力を取材しつづけるライターの著者が、この国で生きる… もっと読む
なんの絆か。
なんの呪縛か。
ときどきすごく滑稽に感じる。

結婚と夫婦別姓、政治とジェンダー、透明化される性犯罪被害者の声――。
性暴力を取材しつづけるライターの著者が、この国で生きる女性やマイノリティが直面する困難を問い直す、フェミニズム・エッセイ。


【目次】
はじめに

1 夫婦って、家族って
なんで結婚したんだろう/ダブルインカムツーキッズ/祖父の話/夫の家事能力が高い

2 日本社会がよくわからない
お前らの本音と建前/祟りと滅び/男の本能にエビデンスはいらないんだって/海の近くの裁判所/16年後の判決

3 フェミと政治とインターネット
エモよりデモを(1)親ガチャ・DHC問題/エモよりデモを(2)「女性はいくらでもウソをつける」/エモよりデモを(3)「ホームレスデート」と、暴力と排除に抗議するデモ/ヴィーガンとフェミニストと、なりすます人/特定した話/フェミと選挙

4 私の身体と人生と
毛を抜く人生/自分の具合悪さは自分にしかわからない/占いからの怒られと抵抗/おたまさんと、恋愛のない生活

おわりに


【著者プロフィール】
1980 年東京生まれ。大学院卒業後、2008 年に共同経営者と編集プロダクションを起ち上げ取締役を務めたのち、2018 年からフリーライターに。Yahoo! ニュース個人「小川たまかのたまたま生きてる」などで、性暴力に関する問題を取材・執筆。著書に『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)、共著に『わたしは黙らない―性暴力をなくす30の視点』(合同出版)。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2023年6月10日

毎日新聞のニュース・情報サイト。事件や話題、経済や政治のニュース、スポーツや芸能、映画などのエンターテインメントの最新ニュースを掲載しています。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
武田 砂鉄の書評/解説/選評
ページトップへ