書評

『鎌倉時代仏師列伝』(吉川弘文館)

  • 2024/05/28
鎌倉時代仏師列伝 / 山本 勉
鎌倉時代仏師列伝
  • 著者:山本 勉
  • 出版社:吉川弘文館
  • 装丁:単行本(292ページ)
  • 発売日:2023-11-29
  • ISBN-10:4642084363
  • ISBN-13:978-4642084369
内容紹介:
院政期以後、仏師たちは院派・円派・奈良仏師の三派に分かれていたが、鎌倉時代には奈良仏師から慶派も生まれ、京都・奈良・鎌倉や地方の寺々で腕を振るった。運慶・快慶・院尊・湛慶・隆円・善円ら39名の仏師をとりあげ、事績と作風の特徴を図版とともに解説する。優れた造仏の技量に加え、時代と社会のなかでの個性豊かな生き様に迫る。

仏師たちの事績や作風を流派から探る

南都焼討で焼失した寺院の復興、為政者たちの祈りを造形すべく、京都や奈良、鎌倉、地方で腕をふるった鎌倉時代の仏師(ぶっし)たちの事績と作風の特徴を図版と共に解説する。運慶(うんけい)派、快慶(かいけい)派、院(いん)派、円(えん)派に加え、善(ぜん)派と呼ばれるグループ、さらに信濃や東国の地方仏師の39人を取り上げる。
平安後期の定朝(じょうちょう)の系統から院派、円派、奈良仏師の三系統に分かれ、このうち奈良仏師から運慶派、快慶派が派生する。
第一章「運慶派」で紹介する一人目は「鎌倉彫刻の父」と位置づける康慶(こうけい)。朝廷からも鎌倉幕府からも重きを置かれ、子・運慶の「王道を準備」し、多くの仏師を育てた。そして運慶は京都・円成寺大日如来像に始まり、初期の東国鎌倉での造像で「迫力ある作風に鎌倉彫刻の新様式」を明確に示した。興福寺や東大寺など南都復興に果たした事績が輝かしい。
運慶と共に鎌倉時代を代表する快慶は、重源(ちょうげん)を師とする敬虔な浄土教信仰者であり「仏像作家と信仰者の二面性が」その性格を特徴づける。重源に重用され東大寺再興造像で活躍する。仏教者との関わりで造立に携わることも多いが、後半生には宮廷貴顕(きけん)や大寺の大規模造像に携わり「信仰者としての性格が薄れ」るなど、信仰の面からの読み解きは興味深い。
仏師たちの優れた技量や作風だけでなく、天皇や摂関家、幕府との関わり、僧綱(そうごう)位の地位が称号となって仏師の社会的地位を押し上げたかなど、政治的な動きもみながら、時代を駆け抜けた個性溢れる仏師たちの姿を描く。


[書き手] 棚井里子(新聞記者)
鎌倉時代仏師列伝 / 山本 勉
鎌倉時代仏師列伝
  • 著者:山本 勉
  • 出版社:吉川弘文館
  • 装丁:単行本(292ページ)
  • 発売日:2023-11-29
  • ISBN-10:4642084363
  • ISBN-13:978-4642084369
内容紹介:
院政期以後、仏師たちは院派・円派・奈良仏師の三派に分かれていたが、鎌倉時代には奈良仏師から慶派も生まれ、京都・奈良・鎌倉や地方の寺々で腕を振るった。運慶・快慶・院尊・湛慶・隆円・善円ら39名の仏師をとりあげ、事績と作風の特徴を図版とともに解説する。優れた造仏の技量に加え、時代と社会のなかでの個性豊かな生き様に迫る。

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初出メディア

仏教タイムス

仏教タイムス 2024年2年15日

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