超知能AIや生命操作技術が、人間とその暮らしを予測不能な形で変えるとする、トランスヒューマニズム、シンギュラリタリアニズムが広がりつつある。機械が人間を超え、データ至上主義になる時代が遠からずやってくると信じる「合理主義者」たちへの取材報告である本書を読み、ディジタル社会に遅れまいとする頭を少し休め、主体は人間だと再確認する必要を感じた。
彼らには、AIによって滅びるか、神になるかの選択しかない。前者を避けるために全力を尽くしていることは評価するが、人間を神にするのは困る。不老不死、宇宙進出、更には隕石などから居住可能な惑星作りの可能性まで考え、それを繁栄とするのである。
彼らは効果的利他主義運動と称して費用対効果が高い慈善事業を支援している。その最重要テーマは「人類の危機」であり、ここでもAIが課題になる。著者は、取材相手を変わった人達と感じたと何度も書く。仲間内での雑談がないという指摘は興味深い。今後の社会へのAIの影響力の大きさを考えると、変な人たちの動きとだけ言っているわけにはいかないだろう。