書評
『道徳の系譜学』(光文社)
聖書は初めから読んでもいいが、辞書のように任意のペーシを引くこともできる。ニーチェの書物もその意味では聖書と同じ活用法ができる。そもそも『ツァラトゥストラかく語りき』も『この人を見よ』も聖書の福音書のパロディになっている。
このアンチ・キリストたる男は、キリスト教がヨーロッパの精神構造に及ぼした悪影響を取り除こうとしながら、社会道徳や国民意識の創生プロセスの欺瞞を批判する。合理的な法則を見出そうとするスピノザの神への知的な愛を、二ーチェは絶えざる流動のなかで捉えようとし、永遠に自己創造し、永遠に自己破壊する運命への愛へと過激に推し進める。宗教権威や社会道徳や形而上学といった超越論的枠組みから、思考を解き放ち、能動的に自らを更新しながら回帰することを説く。世界は移ろいやすい。しかし、自由な精神の持ち主は世界よりも早く移ろう。単に道徳を守る者は、本能を甘く見ている。おのが本能に忠実であろうとする者は、その本能よりも速く走ろうとする。そこに倫理が生まれる。
このアンチ・キリストたる男は、キリスト教がヨーロッパの精神構造に及ぼした悪影響を取り除こうとしながら、社会道徳や国民意識の創生プロセスの欺瞞を批判する。合理的な法則を見出そうとするスピノザの神への知的な愛を、二ーチェは絶えざる流動のなかで捉えようとし、永遠に自己創造し、永遠に自己破壊する運命への愛へと過激に推し進める。宗教権威や社会道徳や形而上学といった超越論的枠組みから、思考を解き放ち、能動的に自らを更新しながら回帰することを説く。世界は移ろいやすい。しかし、自由な精神の持ち主は世界よりも早く移ろう。単に道徳を守る者は、本能を甘く見ている。おのが本能に忠実であろうとする者は、その本能よりも速く走ろうとする。そこに倫理が生まれる。
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