書評

『快感原則の彼岸―自我論集』(筑摩書房)

  • 2017/09/15
自我論集 / ジークムント・フロイト,竹田 青嗣(編集)
自我論集
  • 著者:ジークムント・フロイト,竹田 青嗣(編集)
  • 翻訳:中山 元
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:文庫(360ページ)
  • 発売日:1996-06-01
  • ISBN:4480082492
内容紹介:
「わたし」の意識はわたしが知らずにいる無意識によって規定されている。「意識」には「無意識」を、「理性」には「リビドー」を対置して、デカルト以来のヨーロッパ近代合理主義に疑問符をつきつけたフロイト。「自我」(「わたし」)を「意識」「前意識」「無意識」という構造として理解しようとした… もっと読む
「わたし」の意識はわたしが知らずにいる無意識によって規定されている。「意識」には「無意識」を、「理性」には「リビドー」を対置して、デカルト以来のヨーロッパ近代合理主義に疑問符をつきつけたフロイト。「自我」(「わたし」)を「意識」「前意識」「無意識」という構造として理解しようとした初期の論文から、それを巨大な「エス」の一部ととらえつつ「超自我」の概念を採用した後期の論文まで、フロイト「自我論」の思想的変遷を跡づけた。「欲動とその運命」「抑圧」「子供が叩かれる」『快感原則の彼岸』『自我とエス』「マゾヒズムの経済論的問題」「否定」「マジック・メモについてのノート」の8編を、新訳でおくる。
シュルレアリストと呼ばれた夢のコレクターたちも私淑していたフロイトは、抑圧的な性モラルの支配下にあったウイーンのブルジョワ社会に対する一つの挑戦として、ヒステリーの根底にある性的欲求不満を精神分析によって暴いた。しかし、性的欲求の充足だけでは説明のつかない症例があり、自らの理論を修正して、死の欲動という概念をつくった。

ところで、フロイトは、個々の無意識にしまわれていた死の欲動が国家単位で発揮されてしまった第一次世界大戦を見ている。自己の権利を国家に譲り渡して、存在の根拠を確保しようとした個人は、いくら理性を保とうが、国家単位の破壊衝動には立ち向かえない。国家は、理性的な個人を原始人に押し戻し、その本能を国家に奉仕させようとする。フロイトの理論はアメリカで受け容れられたが、ヒステリーや分裂病の治療にはその理論より戦争のほうが効果的だったりするのは、個人が権利を国家に委ねているがゆえだ。恒常的な平和は国家間においては望むべくもないが、少なくとも戦争がなくならない根本的原因がフロイトによって暴かれている以上、それを理性的に回避する手立てはある。

【この書評が収録されている書籍】
必読書150 / 柄谷 行人,岡崎 乾二郎,島田 雅彦,渡部 直己,浅田 彰,奥泉 光,スガ 秀実
必読書150
  • 著者:柄谷 行人,岡崎 乾二郎,島田 雅彦,渡部 直己,浅田 彰,奥泉 光,スガ 秀実
  • 出版社:太田出版
  • 装丁:単行本(221ページ)
  • 発売日:2002-04-01
  • ISBN:4872336569
内容紹介:
現実に立ち向かう知性回復のために本当に必要なカノン(正典)を提出し、読まなくてもいい本を抑圧する、反時代的、強制的ブックガイド。

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自我論集 / ジークムント・フロイト,竹田 青嗣(編集)
自我論集
  • 著者:ジークムント・フロイト,竹田 青嗣(編集)
  • 翻訳:中山 元
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:文庫(360ページ)
  • 発売日:1996-06-01
  • ISBN:4480082492
内容紹介:
「わたし」の意識はわたしが知らずにいる無意識によって規定されている。「意識」には「無意識」を、「理性」には「リビドー」を対置して、デカルト以来のヨーロッパ近代合理主義に疑問符をつきつけたフロイト。「自我」(「わたし」)を「意識」「前意識」「無意識」という構造として理解しようとした… もっと読む
「わたし」の意識はわたしが知らずにいる無意識によって規定されている。「意識」には「無意識」を、「理性」には「リビドー」を対置して、デカルト以来のヨーロッパ近代合理主義に疑問符をつきつけたフロイト。「自我」(「わたし」)を「意識」「前意識」「無意識」という構造として理解しようとした初期の論文から、それを巨大な「エス」の一部ととらえつつ「超自我」の概念を採用した後期の論文まで、フロイト「自我論」の思想的変遷を跡づけた。「欲動とその運命」「抑圧」「子供が叩かれる」『快感原則の彼岸』『自我とエス』「マゾヒズムの経済論的問題」「否定」「マジック・メモについてのノート」の8編を、新訳でおくる。

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