書評

『日常生活の精神病理』(岩波書店)

  • 2024/04/15
日常生活の精神病理 / フロイト
日常生活の精神病理
  • 著者:フロイト
  • 翻訳:高田 珠樹
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:文庫(606ページ)
  • 発売日:2022-06-15
  • ISBN-10:4003364295
  • ISBN-13:978-4003364291
内容紹介:
よく知っているはずの画家の名前がどうしても思い出せない。ありえない言い違いや読み違いをしてしまう――日常のささやかな度忘れや失錯の奥に潜む、思いもかけない想念や欲望とは。フロイト(1856-1939)存命中にもっとも広く読まれ、各国語に訳されてきた著名な一作の改訳新版。十全な注と事例の一覧も付す。
フロイトはよく旅をした。そしてど忘れ/記憶違い/言い違い/読み違い/…をした。それらを掘り下げ心の奥底をのぞき込もうとする。

冒頭の事例が印象的だ。フロイトはよく知る画家シニョレッリの名をど忘れした。彼の分析はこうだ。旅の連れと性の話題になり、それをはぐらかしたため、似た音や連想がはたらいてしまう画家の名前が出て来なくなった。心の隠れたメカニズムに立ち向かう「科学」である。

本書の初版は約八○頁(ページ)。読者が類例を寄せるなどして次第に膨らみ、大冊になった。文庫の付録「内容の構成と事例一覧」が重宝する。

フロイトが育ったのは落日のハプスブルク帝国。時代の足音に怯える人びとの無意識に、彼は科学のメスをあてた。ユダヤ人の彼は、キリスト教やアカデミアから排除された。その外側から、精神の不条理を合理的に解明する道があると示した。

いま時代は巡り、社会の全体を見通せない人びとは、SNSの陰謀論やフェイクで不安にかられる。何かから目を背け何かを信じこむメカニズムだ。この集合心理の暗部に光を当てる、新しい時代の科学者フロイトがまた出てほしいものである。
日常生活の精神病理 / フロイト
日常生活の精神病理
  • 著者:フロイト
  • 翻訳:高田 珠樹
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:文庫(606ページ)
  • 発売日:2022-06-15
  • ISBN-10:4003364295
  • ISBN-13:978-4003364291
内容紹介:
よく知っているはずの画家の名前がどうしても思い出せない。ありえない言い違いや読み違いをしてしまう――日常のささやかな度忘れや失錯の奥に潜む、思いもかけない想念や欲望とは。フロイト(1856-1939)存命中にもっとも広く読まれ、各国語に訳されてきた著名な一作の改訳新版。十全な注と事例の一覧も付す。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2022年9月24日

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