根にもつタイプなんでしょうか、誰かの嫌なひとことが、いつまでも引っかかります。何年も前のことなのに夜中に思い出して眠れなくなったり、「あのとき、こう言い返してやればよかったのに」などと自分のふがいなさに腹が立ったり。
Jamの『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』(サンクチュアリ出版・1210円)は、そんなときに効く本です。
著者はおもにゲーム関係のデザインをしたり、マンガやイラストを描いたりしている人。いかにも人を食ったタイトルは、著者が人間関係で悩んでいるとき友人から投げかけられた言葉。嫌なことを言った人は、キミが気に病むほどキミのことを気にしていないよ、という意味です。こちらが悩むほど、向こうは深く考えていない。そう考えると、気分が楽になったと著者はいいます。
この本には、嫌な気持ちを引きずらないための考え方やコツが64個、紹介されています。もともと著者は悩みが多く、心理学や哲学の本を読みあさったりもしたそうですが、いちばん効いたのが友人の“パフェ発言”だったとのこと。専門家や偉い人の言葉より、身近な人の軽い言葉のほうが有効だとは、現代社会における知識人の役割について考えさせられます。一応、この本の解説は精神科医の名越康文ですが。
この本が出たのは2018年の7月で、それからずーっと売れ続けています。20年の12月には続編として『孤独も悪くない編』が出ました。ぼくと同様、悩んでいる人がいかに多いか。
64個のお悩みとそれに効く言葉について、4コママンガがついています。描かれているのは人間ではなく猫。心が弱っているときは、やっぱり猫なんですね。
挙げられている64個のお悩みの多くはSNS使用によるもの。SNSは便利ですが、それによって疲れたり傷ついたりする人もたくさんいます。本書を読んでのぼくの結論は、これからもSNSには近づかない、です。