書評

『テクノ専制とコモンへの道 民主主義の未来をひらく多元技術PLURALITYとは?』(集英社)

  • 2025/09/22
テクノ専制とコモンへの道 民主主義の未来をひらく多元技術PLURALITYとは? / 李 舜志
テクノ専制とコモンへの道 民主主義の未来をひらく多元技術PLURALITYとは?
  • 著者:李 舜志
  • 出版社:集英社
  • 装丁:新書(264ページ)
  • 発売日:2025-06-17
  • ISBN-10:4087213692
  • ISBN-13:978-4087213690
内容紹介:
世界は支配する側とされる側に分かれつつある。その武器はインターネットとAIだ。シリコンバレーはAIによる大失業の恐怖を煽り、ベーシックインカムを救済策と称するが背後に支配拡大の意図が… もっと読む
世界は支配する側とされる側に分かれつつある。その武器はインターネットとAIだ。シリコンバレーはAIによる大失業の恐怖を煽り、ベーシックインカムを救済策と称するが背後に支配拡大の意図が潜む。人は専制的ディストピアを受け入れるしかないのか?
しかし、オードリー・タンやE・グレン・ワイルらが提唱する多元技術PLURALITY(プルラリティ)とそこから導き出されるデジタル民主主義は、市民が協働してコモンを築く未来を選ぶための希望かもしれない。
人間の労働には今も確かな価値がある。あなたは無価値ではない。
テクノロジーによる支配ではなく、健全な懐疑心を保ち、多元性にひらかれた社会への道を示す。
「管理職はすぐ失業」「生成AIのせいで労働は無価値に」…こんな見通しは間違いだ。統合テクノクラシー(AIに政治をやらせる)でも企業リバタリアニズム(国家を優秀な企業家が経営する)でもない、第三の道(デジタル民主主義)を目指そう。副題「民主主義の未来をひらく多元技術PLURALITYとは?」の通りに、政治を再生し、経済を活性化させる具体的処方箋を提案する。

プラットフォーマー(グーグルやアップルや…)が人びとのデータをかすめ取る。情報には価値があるのだから対価を要求しよう。それを代行するのがMIDs(個人データの仲介者)。生成AIは膨大なデータを日々読み込まないと機能しない。団体交渉で情報の尊厳を守ろう。

著者は柄谷行人氏の議論を踏まえ交換様式Xを提案する。DX時代の新しい互助的社会関係だ。COSTは財産に相応の税金をかけて共有する仕組み。QF、QVは企業経営や選挙を改善する仕組み。デジタル技術による企業現場や民主主義の新しいかたちだ。台湾でも日本でも実験が行なわれつつある。この社会を生きるに値する社会に作り変える新機軸が満載の、必読の一冊である。
テクノ専制とコモンへの道 民主主義の未来をひらく多元技術PLURALITYとは? / 李 舜志
テクノ専制とコモンへの道 民主主義の未来をひらく多元技術PLURALITYとは?
  • 著者:李 舜志
  • 出版社:集英社
  • 装丁:新書(264ページ)
  • 発売日:2025-06-17
  • ISBN-10:4087213692
  • ISBN-13:978-4087213690
内容紹介:
世界は支配する側とされる側に分かれつつある。その武器はインターネットとAIだ。シリコンバレーはAIによる大失業の恐怖を煽り、ベーシックインカムを救済策と称するが背後に支配拡大の意図が… もっと読む
世界は支配する側とされる側に分かれつつある。その武器はインターネットとAIだ。シリコンバレーはAIによる大失業の恐怖を煽り、ベーシックインカムを救済策と称するが背後に支配拡大の意図が潜む。人は専制的ディストピアを受け入れるしかないのか?
しかし、オードリー・タンやE・グレン・ワイルらが提唱する多元技術PLURALITY(プルラリティ)とそこから導き出されるデジタル民主主義は、市民が協働してコモンを築く未来を選ぶための希望かもしれない。
人間の労働には今も確かな価値がある。あなたは無価値ではない。
テクノロジーによる支配ではなく、健全な懐疑心を保ち、多元性にひらかれた社会への道を示す。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年9月20日

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