書評
『所有という神話―市場経済の倫理学』(岩波書店)
年初から景気回復が伝えられ、夏場も液晶テレビなど高額商品が売れたが、一方では貯蓄が底をつき破綻(はたん)する家計も続出した(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2004年9月)。構造改革はリストラを是とし大企業に業績回復させつつ、利益を底辺まで行き渡らせる策ではなかったのか。
いまこそ所得再分配や市場競争への規制などを唱える「リベラリズム」の出番だが、資本や身体・土地について所有権は不可侵であり所得は市場への「貢献」で配分せよと迫る「リバタリアニズム」に対し、経済活性化の点で旗色が悪い。著者は社会システム論と倫理学を駆使しつつ、福祉の正当化という経済学が避けてきた難問に挑む。
難解な表現が混じるが、市場は孤立系ではないというのがポイント。平等であるべき機会は権力により歪(ゆが)められ、自己決定しているかに見える個人も父母なく生まれはしない。社会は人々相互の「配慮と尊重」から成り立っているのだ。では、平等さを測る基準は何か?具体論が期待される。
いまこそ所得再分配や市場競争への規制などを唱える「リベラリズム」の出番だが、資本や身体・土地について所有権は不可侵であり所得は市場への「貢献」で配分せよと迫る「リバタリアニズム」に対し、経済活性化の点で旗色が悪い。著者は社会システム論と倫理学を駆使しつつ、福祉の正当化という経済学が避けてきた難問に挑む。
難解な表現が混じるが、市場は孤立系ではないというのがポイント。平等であるべき機会は権力により歪(ゆが)められ、自己決定しているかに見える個人も父母なく生まれはしない。社会は人々相互の「配慮と尊重」から成り立っているのだ。では、平等さを測る基準は何か?具体論が期待される。
朝日新聞 2004年9月26日
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