書評

『道の向こうの道』(新潮社)

  • 2024/11/09
道の向こうの道 / 森内 俊雄
道の向こうの道
  • 著者:森内 俊雄
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(249ページ)
  • 発売日:2017-12-26
  • ISBN-10:4103216050
  • ISBN-13:978-4103216056
内容紹介:
戦争の翳が色濃く残る一九五〇年代の大学時代。そこには自由が、万巻の書が、文学があった。八十代を迎えた作家による自伝的連作集。

失われた文学の豊かさ

80歳を越えた作家による自伝的作品集だが、単なる懐古趣味の文章ではない。失われた文学の環境の豊かさに触れる読者の内側に、言い知れない焦燥感が芽生える。

1956年、主人公は早稲田大学第一文学部露文科の学生になる。入学前から書いていた詩のこと、名物教授たちの講義、そして同級生たちとの邂逅が、飾らない筆致で描かれていく。

早稲田通りの古書店で『詩と愛と実存』という本を買い、学生相手の中華料理屋で焼きそばを食べていると、店の外を同級生の李恢成が「のっしのっしと」歩いていった……。

文学の記憶と人物の配置が絶妙にブレンドされて、頁を捲(めく)る手が止まらない。


道の向こうの道 / 森内 俊雄
道の向こうの道
  • 著者:森内 俊雄
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(249ページ)
  • 発売日:2017-12-26
  • ISBN-10:4103216050
  • ISBN-13:978-4103216056
内容紹介:
戦争の翳が色濃く残る一九五〇年代の大学時代。そこには自由が、万巻の書が、文学があった。八十代を迎えた作家による自伝的連作集。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2018年3月1日

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
陣野 俊史の書評/解説/選評
ページトップへ