書評
『ズボンをはいた雲』(土曜社)
疾走感に満ちた詩句
マヤコフスキーの名前だけが独り歩きしていた時代がある。革命の闘士で、ロシア未来派の詩人。小笠原豊樹による新訳が、しかも「マヤコフスキー叢書」の一冊として出版された。千円程度で、マヤコフスキーの詩が読めるなんて、素晴らしいぞ!若々しい。みずみずしい。高慢で、独りよがりだ。でも、その詩句は、疾走感に満ちている。
ぼくの精神には一筋の白髪もないし、/年寄りにありがちな優しさもない!/声の力で世界を完膚なきまでに破壊して、/ぼくは進む、美男子で/二十二歳。
カッコいいと思う。それ以上の言葉が必要だろうか。
タイトルの「ズボンをはいた雲」について。これはほんとうに奇蹟(きせき)的な詩句。ある日、マヤコフスキーは列車で乗り合わせた婦人と文学談義をしていて、うっかり自分の脳裡(のうり)で磨いていたこの言葉を漏らしてしまう。それから彼は必死で彼女の脳裡からこの語を消そうと関係のない話を1時間も続けた、という。
入沢康夫、序文(入沢はマヤコフスキーの詩句をあえてちりばめた自身の詩を書いている)。
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